仕事がない時こそ「チャレンジの場」を与える
コロナ禍で生産が減る中、私は2020年、こう言い放ったんです。
「自分がチャレンジしたいか、そしてそれに挑戦するから、いくら給料を上げてほしいか、自分で申請する!」
コロナ禍で景気が悪くなり、お取引先からの注文もどうなるかわからない中で、新規の注文を取りたかった。うちの会社としての存続には問題なくても、世の中暗い話ばかりでたまらなかったから始めたこと。
自分でチャレンジしたいことを自分で考えてもらって、それに見合う昇級幅を自分で決めるって、ちょっと刺激になるでしょう? フル生産のときにはそんなこと考える余裕はないから、むしろコロナ禍を逆手に取りました。このときこそ、さらなる多能工育成です。
忙しい時期、つまり会社がうまく回っている時期に、従業員に配置換えや、新しい知識・技能の取得を言い渡すと、本人に、負担や無理がかかる。「自分にはそんなことできません」という感じ。今だから、仕事がないときだから、ほかの仕事にも挑戦しないと仕事がなくなる危機感をあおることで自分の殻を破ってもらい、チャレンジが評価されれば給料も上がるという仕掛け。
会社と従業員がウィンウィンの関係
実際に名乗り出た人は非常に前向きで、一生懸命頑張ってくれています。鍛造工が旋盤まで使えるようになっています。基本給は月額3万円アップ。当然、ボーナスも連動する。なかなか今のご時世、月の基本給が急に上がることなんてありません。
従業員に刺激を与えて、報いて、どんどん現場が改善されれば安いもの。お互いウィン・ウィンです。
多能工を育成して、ラインの負荷を解消する。注文が集中したときにも他ラインの多能工がすばやく生産支援をすれば、残業なく納品が可能になる。人も増やさず対応することができます。リーマン・ショック後に一度実施し、同じ従業員で3倍の仕事をこなせる会社にした、コロナ禍でのさらなるバージョンアップです。