「もし今日が人生最後の日だとしたら」という思考法
――「なぜいまこの仕事をするのか」を考えるのが大切なんですね。
そう考えてみるだけで、全然、違うような気がします。たとえば、何かの「二番煎じ」って言葉がありますけど、なぜいま、このタイミングで二番煎じをするのかっていうことに説明がつけば、仮にテクノロジー的に二番煎じだとしても別に問題ないと思うんです。
最先端のものが常に機能するわけではない。たとえば、エジソンが最初に映写装置を作りましたけど、リュミエール兄弟はそれを発展させていまの映画につながる映写技術を作り、それが世界に普及しているわけで、リュミエール兄弟のことを二番煎じだっていう人はいないですよね。
――落合さんも一つひとつの仕事をする際に、「なぜいま」を常に考えながら臨んでいるわけですね。
そうですね。スティーブ・ジョブズのスピーチで「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日これからやろうとしていることをやりたいだろうか?」という有名な言葉がありますけど、ぼくも常に「人生最後の日」にやらなそうな仕事はやらないって決めてるんです。
いま毎日たくさんの打ち合わせに出ているのは、それがどれも重要だからです。
――通常、雑誌などに寄稿する場合、1回の原稿で結論まで書いて完結するケースが多いと思いますが、今回の本では結論にいたるまでの途中経過が記されています。
次の記事に「続く」という形で終わっている原稿もけっこう本に入ってます。普通、2400字の原稿なら、だいたい600字ずつで起承転結がくるんですけど、ウェブで書く場合は制限もないので、2400字すべて「序」だけが書いてあったりして。
で、次の記事で終わるのかと思ったら、また次も「序」だけだったみたいな(笑)。自分で読み返しても、ああいうのは、けっこうおもしろいのかなと思いました。
――そのほかに、この本ならではの部分はありますか。
ぼくの生の言葉がいちばんよく出ている本だと思います。ぼくは、けっこう合理的な人間だと思われてるところがあるみたいなんですけど、実はそんなにシンプルじゃない。今回の本を読んでもらうと、意外なぼくの本質がわかってもらえるような気がします。