たとえば、ぼくはいま、エキゾチックショートヘアの子猫を飼いはじめたんですけど、その体重増加曲線とか食事記録とか運動記録や水飲みの回数は、自動でとれるものも手動で記録するものも合わせて180日とか200日とか、飽きずに書き続けられるんですよね。その都度食べた餌の好みと体重増加を見比べながらやっていく。

飽きずに続ける忍耐力も研究者には必要だ

――子猫の体重を記録しているんですか。

キャットフードの組み合わせを毎日変えて、トライアンドエラーをしてるんです。毎日記録していくと、このフードとこのフードの組み合わせだと、1日30グラムずつ増えていくんだ……みたいなことが少しずつわかっていく。

エキゾチックショートヘアの体重増加曲線を、毎日、エサを変えながら調べていくのは、ネットを見ても誰もやってないですよね。仮に、これを100匹でやったら、何か明らかになって論文書けるかなって思いながらやるんです。

研究って、こういうことを飽きずに続けられる人が向いているんだと思うんですよね。

――落合さんは研究者に向いているということですね。

ぼくはすべての事柄においてそういうプレースタイルなので。職業研究者っていうものが向いているかはわかりませんが、研究するっていうのは、実験室にこもって毎日実験することが本質ではなくて、何かわからないことを明らかにするためにエネルギーを使って、やり続けていくことだと思うので。

化学・科学イラスト
写真=iStock.com/emma
※写真はイメージです

落合陽一が考える“強い人間”の条件

――『半歩先を読む思考法』の中では、<結局君はどうしたいのか、なんなのか、世界観は? みたいなことと向き合い続けることができた人は強い><魂の色と向かい合う時間を大切にしている>と書かれていました。

幸いなことに、日々、ものすごく忙しいんですけど、ぼくの場合、目の前のやるべきことが全部、魂の色を聞かれる仕事なんですよね。

「いまの時代に自分がどういう意味をもってこれをやるのか」「なぜいま世界でこれが必要なんだ」っていうことを、常に考えないといけない。そういった自分のコアにあるもののことを、「魂の色」と表現しました。

研究論文を書くとか、作品を作るとか、音楽会を仕上げるとか、会社の新しいビジョンや製品を作るとか、そういうものが全部、端から見れば「それでお前は何をしたいのか」「別にやらなくてもいいんだぞ」って言われかねない仕事ばかりなので。