“壁打ち”できる環境を作ったほうがいい

――アウトプットした時に壁打ちできる環境を自分で作ることも大切なんですね。

ビジネスでも研究でも、何かおもしろいことを思いついたら他人と共有して、共有したものを互いに高め合ったり、深め合ったりするような環境に身を置けるかどうか、ということだと思うんです。

それは子育てでも同じで、子どもが小さいうちは、自分が考えたことを他人に聞いてもらったりとか、話したりするのが楽しいっていうコミュニティにおいてあげられれば、それは幸せなことだし、もしそういう環境じゃないなら、親がそういうコミュニティを探すことも大切だと思います。

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――子どもの場合は、やはり親の力も大きいのですね。そういったコミュニティに身を置くことが、その人の姿勢(attitude)を育んでいくと。

そう思います。小さい時に、周囲がちゃんと考えを聞いてあげたりとか、安直な答えに突っ走っていかないようにしたりとか、ここから先は思い切ってやってみたほうがいいとか、そういう知的ノウハウをわかっている人たちがまわりにいると、子どもは磨かれると思います。

思考を止めて、思い込んだ上で行動に移す

――筑波大学の永田(恭介)学長との会話の中で、<研究するには【思い込む力】が重要>というお話がありました。

研究に限らず、世の中のものってだいたいそうじゃないですか。ある程度の段階で「これはこの感じが正しいんだ」と思い込み、実際に手を動かしてやってみないと、成功も失敗もできない。

思考ばかりで知り過ぎちゃうと足が重くなるし、足を軽くするためには多少は向こう見ずなほうがいいんだけど、ただ向こう見ず過ぎるのもよくない。だから、どこかで思考を止めて、思い込んだ上で行動に移すこと。そこは大切だと思っています。

――落合さんが大学の先生として教え子を見ていて、その「思い込む力」で突き進める学生と、そうでない学生の違いってありますか。

これはいつも学生さんに口を酸っぱくして言っているんですけど、ふだん生活している時に、空いている時間をすべて研究に費やしている人は向いてるけど、そうじゃない人は向いていないよって。

研究と言っても、空いている時間すべてラボで実験装置を回してろ、という意味ではなくて、たとえば、食事の時に調味料が5つあったら、5つをそれぞれ使ってみて、どれがどうだったかを覚えておいてそれぞれの施行結果を吟味しまた繰り返す、みたいな人じゃないと、あまり研究には向いていない気がしますね。

つまり、生活の中でトライアンドエラーを永遠にし続けるようなタイプは、実験装置がなくても何かの研究をはじめるわけです。