平均年齢80歳、おじいちゃんたちのユルい会社

「竹の洗剤」を作る会社を訪ねて、生まれて初めて山口県を訪れた田澤さんは、そこで運命の出会いを果たす。1975年からその地で炭焼きをスタートし、2003年に竹炭と湧き水で作った洗剤原液、竹ミネラルを全国で初めて開発・販売した伊藤緑地建設だった。

竹炭を作るための炭窯に竹を搬入
竹炭を作るための炭窯に竹を搬入(写真=エシカルバンブー提供)

田澤さんは当初、OEMで製造を委託し、竹タオルとセットで販売しようと考えていたという。「ところが、80歳前後のおじいちゃんやおばあちゃんたちが中心となっている会社で、『もうトシだから、自分たちだけでは事業を続けていくことができない。こんなにすばらしいタオルを作ったあんたに、この事業を継いでほしい』と」

田澤さんは、「『エコ』を『エゴ』にして、お金儲けの手段としか見ていない企業が多い中、これほど安全な商品づくりをしている会社はなかなかない。きちんとストーリーを伝えれば、絶対にファンが付くと思った」という。そして事業を600万円で買い取った。

600万円で買い取った理由

当時の竹ミネラル事業は採算度外視の「おじいちゃんたちのお小遣い稼ぎ」で、売り上げは月34万円程度。容器代と設備費を支払うとギリギリという状況だったという。「周りからは『自分なら100万円でも買わない』『バカじゃないの?』と言われました」と田澤さんは笑う。しかし、600万円という金額には理由があった。

原料の竹を伐採
原料の竹を伐採(写真=エシカルバンブー提供)

「あまり安い金額だと、商品が売れていないうちはいいのですが、業績が良くなった時にもめる。将来、絶対に伸びる事業だと思ったので、リスクマネジメントの観点から金額をはじき出したんです」

こうして2015年、田澤さんは伊藤緑地建設から正式に竹ミネラル製造業務を事業継承した。この竹ミネラルを商品化したのが、現在の主力商品である洗剤「バンブークリア」だ。

竹ミネラルの原料となる竹炭を製造していた人の多くは高齢者で、「お金が欲しいわけじゃない」「自由に働きたい」という強い希望があった。このため、社員として雇用するのではなく、彼らと一緒に竹炭を作り、その分を会社が買い上げる形にした。そのスタイルもユニークだ。竹ミネラルによる収入は「炭窯貯金」として貯めておき、ある程度まとまった金額になったら、おじいちゃんたちがみんなでおいしいものを食べに行ったり、旅行に行ったりするのに使っているという。

炭焼きを担当する職人さんたちの誕生会
写真=エシカルバンブー提供
炭焼きを担当する職人さんたちの誕生会