稲泉 取材した人たちでも、30歳くらいになると責任のある立場を得ていることが多いです。それこそ就職活動に2回失敗して、一時はフリーターとして働いていた女性も、今は企業の中でちゃんと評価されている。20代でベンチャー企業の部長になった人もいました。
海老原 不況期就職をマイナスイメージで捉えず、「大手のブランド企業にいけなくてよかった!」という「逆構築」を僕はしたい。
稲泉 転職の過程で就職課の職員や転職コンサルタントに「やりたいことではなく働き方で企業を見てみたら」とアドバイスを受けたという人がけっこういました。就職に対するイメージを別の角度から捉える視点。その持ち方をアドバイスしてくれるこうした人や機能が、もっとたくさんあるとよいのかもしれません。
海老原 新卒の就職を「好きな仕事や業界で選べ」という識者が多いですが、あれは間違い。本当は「好きな社風」で選ぶべきなんです。
――よく「就社ではなく、就職だ!」と言いますが。
海老原 仕事が辛くても、気の合う仲間がいて、会社のスタイルも自分と合っていれば、心地よいから辞めはしません。規模とかブランドではなく、そんないい組み合わせが、本当は必要なんです。
稲泉 僕と同世代の人と話をしていると、もっと上司と酒を飲みながら熱く仕事の話をしたい、夢を語り合いたいと話す人がかなりいました。
海老原 そういう人はそういう会社を、個人主義なら、ドライな会社を選ぶべき。ネット就活だと、「はがき応募時代」より大量応募のため、選考が機械的になる。その結果、こうした人肌合わせが弱くなる。そこにも、疲弊する若者の原因があると思っています。