「アベノマスクよりも何十倍もヤバイこと」
言葉は怖いものであります。「人を喜ばせる『狂喜』」にも「人を傷つける『凶器』」にすらなるものです。
西村康稔経済再生担当大臣のことであります。
7月8日、新型コロナ対策で酒類の提供停止に応じない飲食店に対し、西村大臣が「要請に応じない飲食店の情報を金融機関に提供し、金融機関から順守を働きかけてもらう」という趣旨の発言をしました。
これに対し、「融資の打ち切りをちらつかせて、飲食店を脅している」という指摘がネット上で相次ぎました。たとえば社会学者の古市憲寿さんはツイッターで「アベノマスクよりも何十倍もヤバイことで、この国の中枢ががったがったになっていることの象徴だと思う」とつぶやいていました。
西村大臣の発言というのは、みんなが馬鹿にしたアベノマスクよりも何十倍もやばいことで、この国の中枢ががったがったになっていることの象徴だと思う。なぜアベノマスクと比べるかというと、
— 古市憲寿 (@poe1985) July 9, 2021
翌9日、西村大臣は、一連の発言を撤回し、「融資の制限をするというのではなく、優越的地位の濫用にはあたらない」と釈明しました。
言葉は撤回してもなかなか消えないものです。それは言葉が得てして本心から発生するものだからでしょう。
西村大臣の言葉は、「いじめられている子ども」に向かって、ただでさえつらい環境にいるのに「なぜいじめられているのか」という作文を書かせようとする学校の先生みたいなものでしょうか。あるいは津波から逃げようと必死にアクセルを踏む車に「スピード違反!」と言っているような警察官みたいなものでしょう。
飲食店からしてみれば、補償金すらきちんと払ってもらえない苦境の中、背に腹は代えられない気持ちで必死になって営業しているはずです。カネの亡者なんかではありません。