ランキングが示す「消費者の現実的な選択」

「EVの最大の問題点は航続距離の短さ」といわれていたのではなかったか? それにもかかわらず航続距離の短いe-Up!がなぜ売れているのか? その最大の理由は、現実的なEVの使用目的であると私は考えている。

ちょっと古い2015年の資料になるが、電動車両関連の国際シンポジウム、EVS28で発表された資料によると、ドイツでのEVユーザーの多くは高所得で、遠出する場合はほかに所有している内燃機関の車を使用している。つまり、現在のEVユーザーは使用目的によって車を使い分けられる、自動車複数保有の人たちが主だ

車の使用場面の多くは短距離の通勤や買い物等で、それであれば航続距離は150kmもあれば十分以上だ。そういう使い方であれば、自宅で充電できるEVはガソリンスタンドに行く必要がなく使い勝手もよい。

都市部での使用なら、車体は小さければ小さいほどよい。ヨーロッパの都市部は道路端の縦列駐車が多く、大きい車だと駐車スペースを見つけるのに苦労するからだ。

航続距離の長いEVは「現状では使いにくい」

さらに、現状では航続距離の長いEVを買っても、現実は使いにくいのである。

ドイツでのテストによれば、現在最も高性能なEVでも、速度110km/hの走行で現実的に走れる距離は400km程度である。アウトバーンらしくスピードを上げればより短くなり、暖房が必要で電池の効率も悪くなる冬場はさらに短くなる。

Ev-database.orgというサイトのデータでは、フォルクスワーゲンID.3の最高性能版の場合、季候が良い時の都市部での使用では660km走行できるが、高速道路では415km、冬場の高速では320kmしか走れないという。テスラ3のデータもほぼ同様の値だ。

この事実から、高速道路主体の都市間移動では出先での充電は必須と考えてよい。

現在ドイツで主流の50kWの急速充電器では、30分充電しても最大25kW分しか充電できない。現実的には車両側の保護回路が働いたりするため20kW程度しか充電できないだろう。