マツダやホンダのEVが「小さめのバッテリー」である理由

結果的に割高な買い物になったとしても地球環境を重視してEVを選びたい、という人もいるかもしれない。

確かにイメージ的には一切排気ガスを出さないEVは環境に優しいように感じる。しかし現実はかなり異なるのだ。現在のEVに使われているリチウムイオン電池の製造には多大な電力が必要で、その電力が火力発電の場合、製造過程で大量のCO2を発生してしまう。

マツダの試算では、日本で製造する場合35kWh程度のバッテリー容量に抑えることでようやくガソリン車に対するアドバンテージが生まれるという。

マツダの試算はやや厳しめのようなので、実際はもう少し大きくてもアドバンテージはあると思われるが、テスラのように70kWhを超えるような巨大なバッテリーを積んだEVは、生産から廃棄まですべて考えた場合通常の内燃機関の車より多くのCO2を排出してしまうのである。

マツダだけでなくホンダのEVも小さめのバッテリーを搭載しているが、この事実をふまえての判断と思われる。

環境負荷が小さいのは「小型・軽量・小容量」のEV

このように、真に環境のことを考えるならば、EVを選ぶならできるだけ小型軽量のものにしなくてはならない

現在日本で売られているEVは欧米に引きずられてファーストカーで使えるような比較的立派なサイズのものが多いが、それでは地球環境に貢献しない。本来あるべきEVとは、遠乗りは最初から想定しない小型のものだろう。

山崎明『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)
山崎明『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)

それならバッテリーは小容量のもので済むし(=生産時のCO2排出を抑えられる)、走行時の消費電力も小さく、真に環境に優しいEVとなるだろう。自宅で充電しその範囲だけで運用すれば、外部での充電施設の不足も気にならない。短距離走行だけなら電力消費量も限定的で済む。

トヨタが来年一般的に発売(現在は法人や自治体向けにのみ販売)する超小型EVのC+podは1つの回答だ。この車は軽自動車よりもさらに小さい、国交省が新たに制定した「超小型モビリティ」という新しい規格に合わせて作られている。2人乗りで最高速度は60km/hに制限され、高速道路は走れない。

しかし現状では普通免許が必要で税制上は軽自動車と同じ扱いになるため、普及は限定的にならざるを得ないだろう。このあたりは税制や免許制度の改定を期待したいところだ。