億万長者のライバーになれるのも夢じゃない?

「毎日午前9時~午後1時まで、19歳の学生はカメラの前で、インターンシップ先企業の20種類の商品を扱い、価格や品質、注文方法やクーポンの受け取り方などを紹介する。毎日4時間をこのようにしてライブコマースの実践に費やしている」

新設されたばかりのライブコマース科だが、卒業生には明るい未来が待っているのだろうか。この学科で育成するのは「商品紹介をメインとしたライバー」だが、課程を修了したからといってすぐに億万長者級のKOL(Key Opinion Leader)やインフルエンサーになれるとは限らない。中国のライバーは影響力がある順に、「網紅」と呼ばれるインフルエンサー、タレント、企業家、店員・店長と4分類できるが、記録的売り上げを出せるのは上位の3つだと言われている。

上海でコンサルティング業に従事する王磊さん(仮名・30代)は「中国人の消費動機は『有名人が宣伝しているから』ということが多い。卒業後は、ライバー自身の注目度をいかに高めるかがカギになるでしょう」と語っている。

中国政府が「公式の職業」に認定した意味

中国の調査会社「艾媒諮詢」によれば、2019年、中国のライブコマースの市場規模は4338億元(約7兆4000億円)、2020年には9610億元(約16兆3000億円)と、約2.2倍に膨れ上がった。巣ごもり消費で爆発的なブームとなったライブコマースだが、目下、業界ではライバー不足で、育成のためのカリキュラムの標準化と人材の大量輩出が求められている。

2020年7月、中国人力資源社会保障部(略称:人社部、日本の厚生労働省に相当)は、国家が公式に認める9種の職業を新たに発表した。「ブロックチェーンエンジニア」「オンライン学習エンジニアサービス士」などとともに「インターネットマーケター」がこれに加わった。ライバーはこの「インターネットマーケター」の中に分類されているという。

中国には、政府が職業を公認するという独自のシステムがある。あらゆる職業は「中華人民共和国職業分類大典」の中で分類されており、これは職業に必要な技能基準を政府が定め、職業資格証明を作るためにも必要だとされている。経済統計や人口調査、労働需要の予測などもこれをベースに行われている。ライバーは、この分類コードの新職業として今回追加された。

フリーランスの概念がようやく浸透してきた

このシステムからは、末端の労働者を含む、多くの国民を安定的に就業させなければならないという国家としての使命が感じられるが、逆に言えば、就業体系の崩れは国家安定の基盤に影響する。そのため、職業もまた中国政府によって徹底した管理が行われているというわけだ。ちなみに改革開放前の中国都市部は、労働者の誰もが政府系や公営の勤務先に所属しており、フリーランサーという概念などなかった時代だった。