一度中学受験レースに乗ったら、冷静になるのは難しい

そもそも倉田さんはなぜ、湯水のごとく教育費にお金をつぎ込んでしまったのでしょう。それはいくつかの要因が重なっている気がします。

まず、夫も妻も私立中学出身者だったことで、教育水準の高い区立中学が近隣にありながら、公立という選択肢は検討しませんでした。また、名門塾に入れられてしまう「年収1000万世帯」の高給取り意識に加え、親の期待に応えられてしまうお子さんの優秀さも、倉田さんをお受験戦争へと向かわせる大きな原動力になったでしょう。

でも、私もわかるんです。塾に通う子供の頑張りを見ていると、無理してでも応援したくなってしまう。一緒に通っているあの子に成果が出始めると、焦ってしまう。そうしてどんどんヒートアップして、合格を掴み取るまで引くに引けなくなってしまい、後先考えずお金を突っ込んでしまう……。

つまり、ひとたび受験勉強をはじめてしまうと、冷静になるのは非常に難しい。まして子供がやる気になった時、親がその芽を摘むようなことは絶対にしたくないはずです。

勉強
写真=iStock.com/kazuma seki
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教育費の見積もりは、子供が小さいうちに

そう考えると教育費貧乏を免れるには、子供が小さいうちに、お受験戦争の火蓋が切って落とされる前に一度、教育費の見積もりを冷静にするのがベストです。わが家で教育に使えるお金を明確にし、その上で学費を減らしたくないなら自分たちの働き方を変えるなり、出費を抑える方法を考えることです。そうして早い段階から軌道修正できれば、貯められるお金も変わってくるでしょう。

知り合いのママが教えてくれた、目からウロコの教育プランもありました。それは、あえて難関校を選ばない、という戦略です。というのも、難関校に入るとみんな勉強ができるので、いくら賢い子でも指定校推薦を取るのにかなりの努力が必要です。ゆえに難関校の場合、倉田さんのケースのように中学入学と同時にまたすぐ塾に入る子が多いわけですが、それでは親の財布も疲弊しますし、子供も一息つく時間がありません。

そこで知り合いのママは、あえて中堅クラスの私立中高一貫校に子供を入れ、受験シーズンや入学後の塾代を抑えることに成功。難関校ほど勉強でしのぎを削るような雰囲気もないので、子供はのびのびと6年間過ごせる。そうして定期テストをきちんと頑張って、指定校推薦で慶應義塾大学に入りました。先ほどの特待生の話にも通じるものがありますよね。