子供の中学受験で、家計が赤字に転落するケースが増えている。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「子の幸せを願うあまり、教育費貧乏になってしまう家庭がある。子供が小さいうちに、冷静に教育費の見積もりをしておいたほうがいい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山氏のもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

財布
写真=iStock.com/Ja'Crispy
※写真はイメージです
倉田さん(仮名/45歳)のケース
夫 会社員 年収1000万円
本人 専業主婦
長女 中学(私立)3年生
次女 中学(私立)1年生
住まい 分譲マンション(住宅ローン16万円 ※管理費・修繕積立金込)

夫婦ともに中学から私立、当たり前のように娘2人も受験

今回お話したいのは、子供の教育費についてです。小学4年の子を持つ私も今まさに中学受験戦争の渦に巻き込まれそうになっており、決してひとごとではありません。子の将来を思う親の気持ちはみな同じでも、教育にどれだけ資金を投下するかは家庭によって大きく異なり、親の生育環境や経済状況など、さまざまな要因が絡み合って算出されるものだと思います。

子の幸せを願うあまり「教育費貧乏」に陥らないよう、自戒を込めて相談者・倉田紗英さん(45歳/仮名)のケースをお届けしたいと思います。

専業主婦の倉田さんは、大手メーカーに勤める夫と、私立の名門女子校に通う15歳と13歳の娘の4人家族。23区内でも教育水準の高い地域に暮らしており、中学受験は当たり前という環境でした。娘さんの通っていた小学校ではクラスの95%が受験するため、2月の受験シーズンには小学6年生の教室に2、3人しか生徒がいなかったそうです。また、倉田さん夫婦はどちらも中学から私立に通っていたということもあり、子供が小さい時から受験が視野にありました。

夫は大手メーカー勤務だけあって、年収は1000万円。手取りにすると月60万円ほどで、家族4人を養うには十分な額です。倉田さん自身も「うちは高給取り」という意識があったせいか、結婚後すぐに仕事を辞め、専業主婦になりました。

ただ以前もお伝えしましたが、世帯年収800万円以上の家庭が抱きがちな「高給取り意識」というものは非常にやっかいで、「うちはお金持ちだから大丈夫」という気持ちが支出をルーズにさせていくのです。

小5以降、毎月20万円が消えるようになった

そんな倉田さんのたがが外れた瞬間が、「お受験」でした。中学受験の場合、闘いは4年生からはじまります。倉田さんは長女と次女をそれぞれ大手中学受験塾に入れました。小4のうちは月3万~4万円だった塾代ですが、5年生の中盤になると塾に通う日数に加えて、授業時間数が増えて倍の7万円ほどに。さらに私立の難関校を目指す場合、塾とは別に家庭教師や個別塾をつけるのは当たり前らしく、こちらは塾代とは別になんと月10万円! 5年生以上になると、1人あたり月に約20万円もの教育費がかかるようになりました。

私の暮らす地域もお受験激戦地で、開成や麻布、桜蔭といった難関校を目指す場合、小学校入学と同時に“カリスマ家庭教師リスト”的なものをママ友同士が共有しあっています。私が紹介されたトップ家庭教師は1時間3万円……! 週1で月に12万円という超高額にもかかわらず、教えてもらった時点で3年待ちという人気ぶりでした。ツワモノたちは1年生の時点で予約を入れ、お受験シーズンに備えるといいます。