「日本の育休制度は世界一手厚い」は勘違い

日本の育休制度は今も「男性が仕事=育児なんてありえない」という前提で動いています。近年は男性の育休取得が叫ばれているので、一見するといい方向に向かっているように思えますが、では実際に、子どもが産まれた男性が全員育休をとったらどうなるか。

育休中は、賃金の7割弱の休業給付金が雇用保険から支給されます。この間は社会保険料も免除されるので、実際の支給額は賃金の8割程度と考えていいでしょう。育休をとる男性が増え続けていったら、それだけの額を一体どこから捻出するのでしょう。

男性育休推進派の人々は、日本の育休制度は恵まれていると言います。日本の制度は世界一と言う人までいます。しかし、なぜこれほど手厚いのか。それは、この制度が「育休をとるのは女性」という前提で設計されているからではないでしょうか。

日本の女性の平均賃金は男性の約7割しかありません。育休中はさらにその8割しかもらえないわけですから、手厚いとはいえ決して多い額とは言えないように思います。一方、男性は、平均賃金から言えば女性より支給額が多くなります。その人数が女性と同数にまで増えたら、果たして現在の財源で足りるのでしょうか。

男性が全員育休を取ったら、財源はどうするのか

日本の育休制度は、おそらく設計時には男性が育休をとるなど想定していなかったはずです。男性が全員とったら財源をどうするのか、男女の賃金格差や保障額格差をどう是正するのか。そこを隠したまま男性育休を推進しても、いつか問題が起きるのは目に見えています。私には「結局、育休をとるのはほぼ女性で男性はそれほど増えないだろう」とたかをくくっているようにしか思えません。こうした社会のままでは、パタハラもまた起き続けるだろうと思います。

これは結局、男女を平等に扱ってこなかったことのツケではないでしょうか。女性活躍推進も男性育休も、推進するなら「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業も同時に壊していくべきです。