一度社会から転落すると一気に孤立する

私は孤独死の現場をいくつも取材しているが、現役世代の孤独死はとりわけ印象深い。

それは2018年の夏だった。酷暑が連日のようにニュースになり、その日もすさまじい暑さだった。この部屋で亡くなった男性は、50代だった。

男性が住むマンションの鉄のドアは、どこかしこもカビだらけで、その隙間からすさまじい臭いが外まで漏れ出ている。男性が亡くなった場所は、すぐにわかった。キッチンに大きなタールのような黒っぽい染みが広がっていたからだ。その周りには、男性が生きていた痕跡を表すかのように、生きた蛆がまだいまわっていた。

一部上場企業を退職し、20年以上引きこもり

部屋の中は、まるでジャングルのようだった。文庫本やCDがタワーのようになっていて、寝る場所はもちろんのこと、足の踏み場もなかった。エアコンは壊れていて、使えない。室内は40度にも達しようとしていたのに、男性は、たった一人この部屋で暑さと戦っていたのだ。

男性の死因は遺体の腐敗が進み過ぎて検死でも不明だったが、恐らく熱中症ではないかと思われる。

遺族である妹さんに話を聞くことができた。地方に住む妹さんは、男性が亡くなる数カ月前に会っていた。男性とは電話で連絡を取ることはあったが、地方に嫁いでから20年以上、直接会うことはなかった。たまたま上京する機会ができたので、会うことにしたのだという。

妹さんは20年ぶりに会った兄の姿に、衝撃を受けたという。兄の服はすすけていて、歯は一本もなく、まるで老人そのもので、かつての兄とは、全くの別人だったという。

男性は大学を卒業後、一部上場企業に勤めていた。しかし、上司と折り合いがつかずに30代で退職。そこから、貯金を食いつぶし、20年以上にわたって自宅に引きこもるようになったらしい。