コロナ禍が続く中で、子どもたちの心身に異変が表れるケースが増えている。認定ポジティブ心理学コーチの足立啓美氏は、「わが子の“レジリエンス(立ち直れる力、逆境を乗り越える力)”を鍛えることが重要。毎日の声かけでもその力を育むことは可能です」と指摘する。特殊な状況を乗り越えることはもちろん、「ストレスに弱い」「自信がない」「すぐあきらめる」といった課題克服まで、子どもたちの可能性を引き出す“ポジティブ教育”とはいったい──。

※本稿は、足立啓美『子どもの心を強くする すごい声かけ』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

世界的に広がる子どもたちのメンタルヘルス危機

新型コロナウイルスのパンデミックの影響による子どもたちのメンタルヘルスの危機が世界的に報告されています。

日本でも、うつ病や自殺の増加が指摘されています。国立成育医療研究センターが2020年11月~12月に実施した調査(「コロナ×こどもアンケート」第4回調査報告)でも、小学4年生以上の子どもの15~30%に中程度のうつ症状が見られることが分かりました。

私自身、コロナ以降、教育現場の先生方や子育て中の親御さん、そして小学生から高校生の子どもたちから相談を受ける頻度が増えてきています。中でも、「自分や家族が感染したらどうしよう」と強い不安を訴える子どもたちが目立ちます。

リビングルームで子供を叱る両親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

大人の「大丈夫だから…」に反発

あるご家庭のケースです。

足立啓美『子どもの心を強くする すごい声かけ』(主婦の友社)
足立啓美『子どもの心を強くする すごい声かけ』(主婦の友社)

新型コロナに不安を訴える小学生の息子に対し、お父さんが「大丈夫だから」と言葉をかけたところ、息子さんが、「全然分かってない! 僕は大丈夫じゃないよ!」と強く反発。ふだんは温厚な息子さんの豹変ひょうへんする姿に、お父さんは困惑したといいます。

行動制限が長く続き、ニュースやネットでネガティブな情報に多く触れている子どもたちは、自分の力で変えられる、自分で決められるという感覚が少なくなってしまっています。自分の心身の状態に気がつく力も発展途上です。

そんなときにかけられる漠然とした「大丈夫」という言葉に、信頼が持てなくなっても不思議ではありません。それどころか、「その場しのぎの言葉だ」ととらえてしまいがちで、大きな変化や困難への対処能力を上げる機会をなくしてしまうことになります。

その結果、この小学生の息子さんの例のように、感情を爆発させる引き金になることさえあるのです。