繊細な子どもたちに必要な「親からの良い働きかけ」

私が代表を務める日本ポジティブ教育協会の理事らの研究によると、人一倍敏感な気質を持つ子どもたち(HSC=Highly Sensitive Child)は、その繊細な気質がレジリエンスを育てるうえで好ましい影響を与えることが分かっています。

現在のような大きな生活の変化は、とりわけ敏感で繊細な子どもたちにとって大きなストレスとなりえます。

その一方で、繊細さを持つからこそ、親からの良い働きかけによって、立ち直る力をより大きく伸ばしていくことができるともいえます。

小学4年生の女の子の不安を緩和させた2つのコツ

「新型コロナのことを考えると不安で眠れない」という小学4年生の女の子がいました。母親は「大丈夫、何も心配することはない」と励ますように声をかけていましたが、改善が見られず、娘さんはますます元気を失っていったということでした。

そこで、私が母親に2つのことを実行してもらいました。

①子どもの気持ちをそのまま受け止める

娘さんの不安な気持ちをまず、「そうか、不安だよね」「そういう気持ちは我慢しないで話していいよ」「気持ちを話すってとても勇気がいることだね」と、否定せずに、ただ受け止めてもらいました。

家族愛、一体感、安全のイメージ
写真=iStock.com/Gajus
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わが子が不安や悲しみ、怒りなど、ネガティブな感情を感じているとき、親は心配なあまり無理に前向きな方向に持っていこうとしたり、ネガティブな気持ちを打ち消そうとしたりしてしまいます。しかし、子どもにとっては、自分の気持ちを親から否定されるように感じてしまい、かえって「理解してもらえない」「受け止めてもらえない」と、つらく孤独な思いを深めてしまうのです。

子どもの心と体を守るためにも、まずは子どものどんな感情も受け止めることが大切です。それが子どもに安心感を与え、親に対する信頼感を育てていきます。

②体の緊張を和らげる

不安な状態が続くことで、子どもたちは心だけでなく、体も緊張状態が続いてしまい、呼吸が浅くなったり、体が固くなったり、夜眠れなくなったりしがち。

そのようなときには、ゆっくり深呼吸をしたり、背中を指先で軽くトントンとたたいたりするなどの「タッピング」が有効です。レジリエンスの授業で呼吸法の練習を子どもたちに実施する際、ストレスを多く感じている子ほど、「頭がすっきりした」とその効果を報告してくれます。

深呼吸をする際のポイントは、背筋を伸ばして、息をなるべく長く、ゆっくりと吐き出すこと。体や心のつらさや苦しさを一緒に吐き出すように行います。シャボン玉を大きくふくらませるようなイメージを持つ、ピンポン球(卓球の球)を机の端から端まで転がすゲームをするなど、ゲーム感覚で行うのもよいでしょう。

子どもたちはタッピングも大好きです。親子のスキンシップになりますし、思春期の子どもたちもマッサージの一種として受け入れてくれるケースが多いといえます。

心と体は連携しているので、体の緊張をとることが、心の緊張をとることにつながります。体の緊張がとれると自然と心に余裕ができてきます。事実、小学4年生の女の子の状態も、これら2つのことを継続していただくことで、だいぶ落ち着いていきました。