「菅首相から納得がいくような言葉は聞かれなかった」と毎日社説
「新型コロナウイルス禍のさなかで、なぜ東京オリンピック・パラリンピックを開催するのか。国民の安全は確保できるのか。菅義偉首相から納得がいくような言葉は聞かれなかった」
こう書き出すのは、「党首討論と五輪 開催の意義を語れぬ首相」との見出しを付けた毎日新聞(6月10日付)の社説である。
朝日社説同様に毎日社説も菅首相に手厳しい。沙鴎一歩も「納得がいくような言葉」は少なかった、と思う。
毎日社説は「首相は東京五輪を『平和の祭典』と説明している。しかし、そんな抽象的な表現では、国民の不安や疑問は払拭できない。開催ありきで突き進むことは許されない」と指摘したうえで、最後にこう主張する。
「五輪について『国民の命と健康を守るのが私の責任。守れないなら、やらないのが前提』と、首相は繰り返している。そうならば、どのようにして守るのか。分かりやすい言葉で語る責任がある」
オリンピックの開催に当たり、菅首相が国民の命と健康を守るのは当然だ。ただ、「守る」というだけで、どんな状況になれば「守れない」となるのかが示されていない。そうした姿勢では、そもそも中止という選択肢は存在しないのではないかと受け止められてしまう。
持ち時間5分は、大局的な討論をするには短すぎる
朝日社説や毎日社説に比べ、東京五輪の開催に前向きな読売新聞(6月10日付)の社説は「党首討論 五輪開催へ情熱と具体策語れ」との見出しを立て、書き出しでこう主張する。
「スポーツの祭典の意義が損なわれないよう、菅首相は具体的な安全策を示して、国民の理解を求めるべきだ」
菅首相は「オリンピックを成功させたい」と国会や記者会見で繰り返すが、成功には国民の理解が欠かせない。開催までの短い期間に菅首相がどのように国民の理解を得ていくか、沙鴎一歩はしっかりと見とどけたい。
最後に読売社説は党首討論の在り方に言及する。
「枝野氏以外の野党党首の持ち時間は5分しかなく、大局的な討論をするには短すぎる。与野党は、時間を大幅に拡大するなど、国会活性化に努力してもらいたい」
今回の党首討論は全体が45分だった。党員数の多さから30分が立憲民主党の枝野氏に割り当てられ、日本維新の会、国民民主党、共産党はそれぞれ5分と短かった。全体の時間枠を広げ、各党に少なくとも30分の時間を与えるべきではないだろうか。
ただし、今回、野党が2年ぶりの党首討論を求めた背景には、国会終盤に差し掛かっても予算委員会の開催の目途が立たず、どこかで衆院選に向けてのアピールをしたいとの強い思惑があったからである。与党も野党も党利党略に走るために、党首討論は有名無実となっている。これでは政治不信が広がるのは避けられない。そして投票率が下がるほど、組織票を持つ政党が有利になる。メディアはそうした構図をもっと問題視するべきだ。