非正規社員のセーフティネットの機能不全が起きている。緊急事態宣言下の休業や時短営業で労働時間が減り、収入が激減したパートやアルバイトは多い。「実質的失業者」(2021年2月時点)は女性103.1万人、男性43.4万人。ジャーナリストの溝上憲文氏は「月収半減で生きていくのにも困る状態の人に休業手当などを支払わないケースが増えている。解雇や雇止めをせず、自ら辞めざるをえない状況に追い込む陰湿な手口もある」と指摘する――。
ストレスの多い女性
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平均月収16万→8万でも「休業手当・休業支援金」もらえぬカラクリ

コロナ禍で非正規社員の首切りや賃下げが相次いでいる。

正社員と非正規社員の格差の是正が叫ばれて久しいが、リーマンショックの時を上回る勢いで悪化している。

コロナの直撃を受けた飲食・宿泊・旅行・アパレルなどの業界は非正規のパート・アルバイトが多い。緊急事態宣言下の休業や時短営業によって労働時間が減らされ、収入が激減している。

野村総合研究所が2021年2月に実施した調査(約6万5000人)によると、コロナ前と比べてシフトが減少しているパート・アルバイトは女性が29.0%、男性が33.9%に達している。

そのうち5割以上減少している人の割合は女性が45.2%、男性が48.5%と約半数を占める。非正規社員の平均月収は約16万円(国税庁、2019年調査)であるが、8万円以下に減っていることになる。一人暮らしであれば家賃や食費にも事欠く金額といえる。

実は会社の都合による休業はもちろん、シフト時間が減少しても休業手当を受け取ることができる。ところが驚くことにシフト減のパート・アルバイトのうち休業手当を受け取っていない人は女性の74.7%、男性の79.0%と大半の人が受け取っていないのだ。

野村総研が昨年12月、「シフトが5割以上減少」かつ「休業手当を受け取っていない」人を「実質的失業者」と定義。総務省の「労働力調査」を用いた全国の女性の「実質的失業者」は90.0万人との推計を発表し、大きな話題になった。2021年2月の調査では女性103.1万人、男性43.4万人と推計し、実質的失業者がさらに増加している。ちなみに3月の完全失業率は2.6%だが、完全失業者は188万人。パート・アルバイトの実質的失業者を加えると1.8倍増になる。

本当はこういう時こそセーフィネットが機能しなくてはならないはずだ。

労働者に対する直接的支援が会社から支給される「休業手当」もしくはコロナ禍の特例措置として設けられた「休業支援金」だ。しかし、前述したように大半のパート・アルバイトが受け取っていない。

それはなぜか。