誤解3:「医師会長は会員の選挙で選ばれる」

→「代議員を介した2段階選挙」

日本医師会長選挙は直接選挙ではない。都道府県ごとに代議員を選出し、代議員による選挙によって選ばれるのだ。都道府県医師会の代議員になるには、地元の医師会で長年尽力して人脈を作ることが一般的なので、代議員のほとんどは60~70代の男性医師となる。さらに、高齢の代議員による2段階選挙システムなので、カリスマ性のある若手候補者が会長選挙に立候補しても当選しにくい。若手開業医や都市部の開業医は、こういう雰囲気を嫌って、あえて加入しない者も増えている。そのため、日本医師会のポリシーは「現状維持」となりがちなのだ。

医師
写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです

誤解4:「医師会の政治力は強力」

→「年々低下する一方」「内部統制も微妙」

日本医師会が最も政治力を振るったのは、1957~83年の武見太郎氏が会長だった時代だろう。日本医師会のみならず歯科医師会/薬剤師会にも強い影響力を持ち、75年には世界医師会会長にも就任した。73~83年は「高齢者医療費自己負担無料」政策が施行され、「病院待合室をサロン化する高齢者」であふれていた。骨董鑑定士の中島誠之助氏も、著書の『骨董掘り出し人生』の中で「(70年代後半は)お医者さんが一番金持ちだった時代」と述べている。

現在の日本医師会には幸か不幸か武見太郎氏のような強烈なリーダーはいない。武見氏の3男である武見敬三氏は参議院議員だが医師ではなく、医師会との関係も薄いと見られる。また、2021年6月4日には「高齢者の窓口負担2割」法案が可決され、施行後には多くの開業医が減収となることが予想される。

中川会長の“寿司デート”について、前々会長の原中勝征氏は前出・週刊新潮(6月3日号)で記者の取材を受け、「(メディアが)記事を書くことでなにかが動いて、それが国民の幸せにつながるのが一番だと思っています」と、“中川体制”の早期退陣を期待しているともとれるようなコメントを残している。