誤解1:「日本医師会は全ての医師を統括」
→「主に開業医を統括」「勤務医は反感も」
よくある誤解の筆頭は「日本医師会長は全ての医師を網羅」「医師会長は全医師の代表」だろう。会員数は約17万人で(医師全体は32万人)、その多くは開業医であり、中川会長は「開業医の代表」と言える。多くの開業医が医師会に加入する最大の目的は、「医師国保(本人のみならず家族や従業員も加入可能)」が、一般自営業者が加入する国民健康保険に比べて格安だからだ。また日本医師会の下部組織である市町村医師会では、会員同士で相談して「休日当番医」制度を設けることが多い。その他、産業医や学校医や保育園嘱託医などの案件の仲介や、開業医向けの勉強会も開催されている。
制度上は勤務医も医師会に加入することは可能だが、健康保険は基本的に事業者(病院)負担でカバーされ、仕事や勉強会の内容もマッチングしにくいので、実際の加入者は少ない。「医療費削減」や「勤務医の働き改革」そして「コロナ患者急増時の病床数確保」のためには、「公立・私立・日赤・JA……など乱立する中小病院を統廃合して効率化」が必要であることは明白だが、日本医師会はむしろ「中小病院の乱立」する現状維持に固執しており、勤務医の中には反感を持つ人も多い。中小病院は、コロナ患者の受け入れ態勢が未整備であることが多く、このことが「医療現場のひっ迫」を招いているのは確かだろう。
誤解2:「医師会は政治団体」
→「学術団体」「日本医師連盟を通じて政治活動」
「医師会の政治力」「医師会が自民党に圧力」など、ニュース解説などで耳にすることは多いが、日本医師会そのものはタテマエでは学術専門団体であり、日本医師会雑誌という学術誌を発行している。下部組織には総合政策研究機構(日医総研)というシンクタンクもあり、週刊新潮が報じた中川会長の“寿司デート”をした女性が主席研究員として在籍している(もっとも、その研究内容が医師仲間の間で話題になることはないが……)。
医師会が学術専門団体だとすれば、中川会長が定期的に会見を開いて政府にコロナ対策などに物申しているのはどういうことなのか、といぶかしく思う方もいるだろう。
会見に関しては中川会長の単独プレーとの指摘もあるが、実は、日本医師会の連携組織に日本医師連盟があり、医師会の政治活動は制度としてはこの連盟を介して行われるようである。現在の日本医師連盟トップページは、小児科医師でもある自見はな子参議院議員のホームページとリンクが張られており、両者の強い絆をアピールしている。「まん防なのに政治資金パーティー」報道のあった政治家も自見氏だった。なお、自見氏は2020年夏、文春砲(8月6日号)において、衆議院議員・厚労省副大臣で妻子ある橋本岳氏と不適切な関係を持ったと報じられたのも記憶に新しい。