低年収、劣悪な労働環境の人ほどハマってしまう

袴田さんって、見た目はパリッとした好青年で、“ギャンブル漬けでくたびれたおじさん”みたいな雰囲気は皆無なんです。他の海外FXをしている方もごくごく普通で、男性が多いんですけど、エンジニアやIT関連企業で地道にやっている方ばかりです。

ただ彼らに共通しているのが、低収入なのにものすごく働かされる、劣悪な労働環境です。みんな年収が300〜400万円で、毎日終電帰りなのに給料は全然上がらない。袴田さんも深夜残業が当たり前なので、通勤が少しでも楽になるようにと、会社近くの都心にマンションを借りていて、家賃は月10万円。年収350万円だと手取りは25万円くらいですが、それに奨学金の返済が月3万円もあり、余裕はありません。

真夜中の作業コンセプト
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

彼女が欲しくてマッチングアプリに登録したけど、「大企業でもないし年収も良くないからか、女の子から連絡がない」とぼやいていました。そう、袴田さんは結婚のためにもお金を増やしたかったんです。

家賃を抑えたり、月1万円かかっていた携帯代を削減したり、趣味のお金を縮小するなど、もう少し早く相談に来てもらえれば海外FXをやる前にお手伝いできることがあったかなという気がしています。ただ、日々の生活で疲弊している袴田さんにこれ以上、節約という努力を強いるのは酷な気もしました。

不安な人ほど「今のお金」を求める

海外FXやビットコインといった「一山当てる」系の投資を選ぶ人は男性に限りません。女性でよく見かけるのは、美容師などの美容関係の方。長時間労働で賃金が上がりにくい点は男性と共通しているかもしれません。

彼らはみんな先行きに不安を抱えています。私のもとに相談に来てくれた方にはまず、つみたてNISAをおすすめしています。……が、低賃金で今まさに不安を抱えて逼迫ひっぱくしている方ほど、時間をかけてコツコツお金を育てる「未来のお金」ではなく、「今のお金」に焦点があたる。そういう方がFXの世界に入って上手くいかなくなると、「海外FXの成功例」みたいな高額商材も買ってしまう。もうドロドロです。

FXのスクールもありますが、授業料3カ月30万とかね。プロの目から見ても謳い文句は秀逸で、これはひっかかるなと思います。ただ、取引云々の前に勉強だけでかなりの大金が飛ぶわけで、そこまでお金をつぎこまなくても、もっとスモールに始められる投資はたくさんありますよ、と言いたい。

袴田さんは私が紹介した多重債務に詳しい弁護士さんのところにも相談に行き、毎月3万円ずつ借金を返していくことにしました。借金を返し終えるまでクレジットカードは使えませんし、万が一、借金を返済できずに自己破産……なんてことになったらブラックリストに載ってしまう瀬戸際です。ただ、数年後にきちんと借金を完済できれば仕切り直せるチャンスは大いにあります。この高い代償をどうにか未来につなげていってほしいと思っています。

(聞き手・構成=小泉なつみ)
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