まさに自分自身が誰にも相談できずに心を病んでしまった
正しい夫。正しい牧師。正しい幼稚園長。すなわち、正しい男性。「男らしさ」の規範に囚われ、しかしそれが実現できない苦しみを誰にも相談できなかったわたしは、けっきょく心を病み、精神科に入院した。
そのとき助けてくれたのは、わたしが「支えている」と思っていた、妻であった。
今回、はじめての著書となる『牧師、閉鎖病棟に入る。』では、そのあたりの機微についても書かせていただいた。わたしが「まともであること」「きちんとしていること」にいかに固執していたのかについて、わたしは包み隠さず著作に吐露した。
こう書けば、まるでわたしが今はその固執から解放されたかのように、読者の方々は思われるかもしれない。
だが、わたしはいまだに達観してなどいない。わたし自身がまだまだ「まともさ」へのこだわりを捨てきれていない。わたしは今なお自分自身と向きあい、問い、葛藤を覚えながら、今日も相談者を待っているのである。