不動産バブルの崩壊で、アメリカでは差し押さえによる競売物件が急増している。2008年9月のデータでは、全米475世帯に1軒の割合で差し押さえが発生している。なかでもラスベガスのあるネバダ州は全米一で、7月の106世帯に1軒から、82世帯に1軒の割合と増えている。
08年1月、ネバダ州のなかでも競売物件が多いといわれるラスベガスを訪れた。空港に着陸する飛行機の窓からは、郊外に大規模な住宅地が点在しているのが見えた。地元の不動産業者に尋ねると、「売却物件が増えている。希望価格で売れないと、持ち主がすぐに値下げし、1週間で数万ドルも下がる」とのことだった。
当時会った業者に最近、話を聞いた。売れ残った物件が銀行に差し押さえられて、次々に競売にかけられている。それだけでなく、家主が住んでいる家までもが、競売にかかるケースが急増しているのだという。
ベガス近郊に土地160坪、5ベッドルームと4バスルーム、ロフトや書斎にキッチン、プールと4台収容可能な車庫付きの2階建てがある。築年数は2年半。ゴルフ場にも至近の場所にあり、日本人なら誰でもうらやむ住環境に建つこの豪邸は、1年前は7億~8億円だった。ところが現在、なんと2億円以下で売りに出されている。
業者がいうには、競売物件の落札額は、多くが評価額の半値から3分の1。だから、「この2階建ての豪邸も正しい値付け」だそうだ。競売物件の発生率の高いフロリダやカリフォルニアあたりでも似たようなもので、「家を失った人たちのテント村が全米各地に生まれている」とため息をついていた。
不動産バブルは世界で崩壊しつつあり、これにまつわるエピソードはアメリカだけに限った話ではない。
例えば、中国だ。彼の国では不動産バブルを演出したのは温州人だといわれている。彼らは上海市に隣接する浙江省などに多く住み、中国随一といわれるほど金儲けに長けた人たちだ。上海や北京などの大都市に林立する高層マンションの物件を投資用に買っては高値で転売してきた。
そんな彼らの中にも、不動産バブルの崩壊で大きな損失を抱える人が増えている。最近、浙江省の州都・杭州市にある大手不動産業者の販売センターに、数百人ものマンション購入者が集まった。1平方メートルあたり、日本円で27万~28万円の物件を買ったオーナーたちが、売れ残りを同20万円強まで値下げしたことに怒ったのだ。