好業績を牽引したのは意外にもオフィス事業
コロナ危機によって日本経済が大打撃を受ける中、住友不動産の業績が好調だ。
2021年3月期決算ではライバル2社が減益となったが、同社は8期連続の最高益更新(親会社に帰属する当期純利益)を達成した。同社の好業績を牽引したのは意外にも逆風が吹くオフィス事業だが、これはどういうことだろうか。
住友不動産の2021年3月期決算は、売上高は前年比9.5%減の9174億円、営業利益は前年比6.4%減の2192億円、当期利益は0.3%増の1413億円となった。
売上高は減っているものの利益が増えているので減収増益ということになる。もっとも、本業のもうけを示す営業利益は前年比マイナスであり、最終損益がプラスとなったのは中国のマンション開発案件の売却という特殊要因があったからである。
テレワークへの移行でオフィス需要は減っている
しかしながら、三井不動産、三菱地所というライバル2社と比較しても同社の利益率は高く、営業減益幅も少なく済んでいるので、やはり好業績と言って良いだろう。
コロナ危機によって、不動産市場には大きな逆風が吹いている。全国的にマンション開発が滞っており、販売戸数は大幅に減少した。
不動産経済研究所の調査によると2020年の首都圏における新築マンション販売戸数は2万7228戸と前年比で12.8%の減少となっている。販売戸数が減れば、その分だけデベロッパーの売上高も減少することになる。
緊急事態宣言に伴う外出自粛などで商業施設の収益が激減していることに加え、多くの企業がテレワークに移行したことからオフィス需要も減っている。
一部ではオフィスを解約する動きが出ており、当然のことながら一連の動きは賃貸事業にとってマイナス要因となる。結果的に大手3社は減収となったわけだが、住友不動産への影響が軽微だったのは、意外にもオフィス賃貸事業が好調だったからである。