不動産市場の二極化が進んでいる

同社の不動産賃貸部門は、ホテルやイベント施設でコロナ危機の影響を受けたものの、主力のオフィスビルは空室率が低く推移したことから増収増益となった。

2019年に竣工した住友不動産新宿セントラルパークタワーや、住友不動産秋葉原ファーストビルが本格稼働したことで通期の売上高が増えた。今年に入って竣工した住友不動産御茶ノ水ビルも満室稼働になるなど、オフィス事業は好調に推移している。

同社はライバル2社と比較して、オフィス賃貸事業の比率が高いことが功を奏した形だ。

テレワークへのシフトによってオフィス需要は減少しているはずなのに、なぜオフィス賃貸事業は好調に推移したのだろうか。実はオフィス賃貸部門は同社に限らずライバル2社もそれなりの業績となっており、総崩れという状況ではない。

ある種の矛盾が発生しているのは、コロナ危機によって不動産市場の二極化が進んだことが原因である。

大規模なテナント退去はあったようだが…

コロナ危機によってテレワークが普及し、オフィス需要は確実に減っている。

実際、富士通のようにコロナ終息後もテレワークを継続し、オフィス面積を半減させる方針を示す企業も出てきた。だが、こうしたオフィス需要の減少は大手3社にとってはそれほど大きな影響を与えない。

自宅からビデオ会議に参加する男性
写真=iStock.com/chee gin tan
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大手が所有するオフィスビルは、基本的に高スペックであり、賃料も相応に高額である。こうした高スペックのビルには多くの企業が入居を希望するが、賃料の関係から入居を諦める企業も多かった。

ところがコロナ危機でオフィスビル需要が減少したことから、一部の大型ビルではテナント退去が相次いだ。ご多分にもれず、住友不動産でも大規模なテナント退去があったようだ。