一生涯、テレワークだけで済ませられる人は少ない

住友不動産のマンション販売戸数も大幅に減少したので、関連部門は減収となっているが、価格の上昇や広告宣伝費の減少(コロナ危機で十分な物件案内ができない)によってむしろ営業利益は拡大している。

コロナ危機によって売上高は減少しているものの、住友不動産をはじめとする不動産会社は、むしろ収益体質に転換したと見なすこともできる。今回の決算は、不動産市場において二極化が進み、市場全体は縮小するものの、有力企業はむしろ高収益化が進む可能性を示唆しているのかもしれない。

日本は人口減少が進んでいると言われているが、2010年代前半は人口は微増となっており、高齢化を除くと大きな変化はなかった。だが、これからの十年は本格的に人口減少が進み、地方の過疎化が急加速する。

テレワークが進展するといっても、生涯労働時代において、一生涯、テレワークだけで済ませられる人は少なく(再雇用などにおいては現場への出勤を命じられる可能性は高い)、住宅購入者の多くはやはり利便性のよい場所を強く求めている。

今後は立地条件の良い不動産市場は引き続き堅調に推移するとともに、立地条件の悪い不動産の市況は絶対的な需要の減少で大きな影響を受けてしまう。

日本社会で進行している大手とそれ以外の「二極化」

収益性の高い物件の争奪戦が始まるので、不動産業界は体力勝負が予想される。縮小市場の中で大手3社はむしろシェアを拡大し、逆に規模の小さいデベロッパーは売上高の減少に悩まされるだろう。

二極化時代においては、条件のよい物件を手がけられたデベロッパーは、黙っていても物件を販売することができる。コロナ危機で定着したシンプルな販売方法が定着し、モデルルームに多額の費用を投じる必要もなくなるので、利益率は向上する可能性が高い。

実は建設業界でも似たような図式となっており、このところ中堅以下のゼネコンがハウスメーカーに買収されるケースが目立っている。

不動産業界で物件の選別が進むのであれば、建設市場にも同じメカニズムが働く。コロナ後は、市場規模の縮小と二極分化が激しくなり、大手とそれ以外の格差が拡大するというのは、多くの業界に共通した動きとなるだろう。

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