たった1分で「電話での売り込み」に成功

広報にとって避けて通れないのが、電話での売り込みです。知っている相手ならまだいいのですが、まったく知らない報道関係者にいきなり電話して取り上げてほしいネタを売り込んでも、やはりなかなかうまくいかないのが現実です。ほとんどの場合、「いまちょっと忙しいんで」とか「リリースを送っておいてもらえれば後で見るから」と迷惑がられます。相手に話を聞いてもらえない原因は、こちらの立場が弱い状態で売り込みをしてしまうからです。

売り込みをするのは広報側で、聞くか聞かないかの判断をするのは報道関係者。その立場は永遠に変えられないのではないかと思う人もいるかもしれません。

しかし、本当は変えられるのです。それもたった1分で。それにはまず、電話の向こう側にいる報道関係者がどんな記事を書いた人なのか、知っておく必要があります。売り込む相手をリサーチしておくのです。

電話の最初の1分で話すべき内容

最近は署名記事も多いので、興味を持った記事があれば、それを書いた記者を調べることができます。新聞・雑誌記事のデータベースサービスの日経テレコンやグーグルで検索し、その記者が書いた過去の記事に目を通すこともできるので、必ずこの下準備をしてから電話をかけます。

このとき、こう話を切り出すのです。

「★★社の●●と申します。米国で人気の高級食材を使ったハンバーガー店を日本に誘致し、今度東京で1号店を出店します。その詳細と、現在の日本におけるハンバーガーチェーン業界の最新動向、そして弊社の参入の目的・狙いなどについてお話しできたらと思いご連絡差し上げました。これについて、▲▲さん(記者)が、○月○日の記事の中で外食産業に関する大変興味深い記事を書かれていたので、ぜひこのお話は▲▲さんにお伝えしたいと思いました。あの記事では、お客さんからの視点とお店側の視点、両方の立場から見たメリットとデメリットがわかりやすく説明されていて、とても頭の中が整理されてすっきりしました。

実はあの記事の中に出ていた牛丼店に私も早速昨日行ってきたんですよ! 昨日は▲▲さんが書かれていたとおり、男性の一人客に加え、女性の“おひとりさま”客も結構来ていました。お店の狙いどおりです。

でも、意外なことに年配のご夫婦も3組いたんですよね。あの牛丼、見た目はボリュームがあるけれど使っている素材にこだわっているし、その点をCMでもアピールしているので、年配の方が食べてもいいんだというイメージが強く残るんでしょうね」

ここまででだいたい1分間です。1分間でそんなに話せないと思うかもしれませんが、実際にやってみるとかなりたっぷり話せます。ぜひ試してみてください。

こういう前振りをしてから、「実は、今回ご紹介させていただきたい米国から来るハンバーガー店というのが、そういった年配者をメインターゲットとしたもので……」と売り込みの本題に入ります。これを読み、「何の面識もない人を相手に、いきなりこんな失礼な発言をしても大丈夫なの? 相手は怒らないの?」と戸惑う声が聞こえてきそうです。怒るどころか、これが相手と対等になるための仕掛けなのです。