新築マンションには価格を下げる理由はない

コロナ前後のマンション価格の動きを振り返っておこう。自粛期間中の4・5月は先行き不安の投げ売りが出て、中古マンションの成約価格は下落した。しかし、この投げ売りは2カ月で終わった。その後は、コロナ前の価格に戻り、今はその価格よりもかなり高くなっている。

新築マンションの方は、売り主側が財閥系を中心に大手寡占に近くなったこともあり、数カ月間販売を我慢することは体力的にできる。売主側が売り急ぐ理由がないなら、価格を下げる理由はない。特に、コロナ禍で緊急経済対策が行われた結果、個人も法人も手元現金が増えている。こうなると、資産売却を急ぐ必要性も薄れ、在庫が大幅に減少している。

新興住宅エリア
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本気度の高い顧客だけの、効率的な販売が可能になった

コロナによって働き方は大きく変わった。それは住まいに対する考え方も変えた。リモートワークの普及と家にいる時間の長さから、居住環境の改善を検討する世帯が急増した。特に「もう1部屋需要」は大きく、賃貸よりも持家マンション、70m23LDKのマンションよりも100m24LDKの戸建を求める人が増えた。巣ごもりしている人たちにとっては、写真やVR(疑似内覧)等が充実している物件検索サイトは支持されて、現地に来訪する時には「確認」だけで即決する人も多くなった。

こうした、本気度の高い顧客だけの来訪がコストを抑えながらの効率的な販売を可能にした。販売戸数は昨年と比して減少したものの、慌てる様子は中堅以下の売り主にしか見られない。この状況下では、売れ行きが極端に悪い物件でない限り、値引き販売などが行われる段階にはない。