景気は悪いが、住宅価格は上がっている。何が起きているのか。スタイルアクト代表の沖有人さんは「価格上昇はこれまで以上の勢い。2023年4月までは金融緩和が続く可能性が高く、そのため2025年の新築マンションの価格はいまよりほぼ確実に高くなるだろう」という――。
マンション
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不動産価格は、ローンの借入額でほぼ決まる

3回目の緊急事態宣言が出て、明らかに景気は悪い。しかし、住宅価格は上がっている。それもこれまで以上の勢いとなっている。不動産価格の決まり方は通常の商品価格とは異なるが、これを理解していない人は多い。

自称評論家が「暴落する」とか「空き家が多いのに」などとコメントしているが、これまで当たった試しは一度もない。独身やファミリーなどの世帯構成に関わらず、現在賃貸に住んでいる人はそろそろ現実を見極めて、ご自宅戦略を軌道修正しないと、高くて買えなくなる日も近いと考えたほうがいい。

就業者数がこの1年順調に増えた産業は不動産業であり、情報通信業並みの水準である(総務省「労働力調査(基本集計)2020年度(令和2年度)平均結果」)。ワーストだった業種は宿泊・飲食業なので、不動産の中でもホテル・飲食は苦戦しているが、最も需要が堅いと言われる住宅はアベノミクス以降、ずっと好景気が続いている。

不動産価格はそれを購入する際のローンの借入額でほぼ決まる。不動産以外の商品はローンを使って買うことはまずない。ここが不動産価格の形成が大きく違う根本原因となる。自分が現金などで支払えるかではなく、住宅ローンが組めれば買うことができる。だからこそ、住宅ローンが借り入れしやすいか否かが価格形成に最も影響するのだ。

「2025年の新築マンション価格は上がる」と言える理由

2012年12月から始まった安倍政権の経済政策「3本の矢」の1つ、金融緩和が始まって既に8年が経過しているが、異次元で行われている。これはデフレ脱却のために始められたもので、インフレ率2%に届くまで終わらないが、届きそうな状況にない。こうなると、黒田日銀総裁の任期である2023年4月まで金融緩和が続く可能性が高い。新築分譲マンションは土地取得が決まってから分譲されるまで約2年かかるので、その時点で金融緩和が続いていると、2025年の新築マンションの価格は上がることがほぼ決まっていることになる。

不動産は担保が取れるので、貸し出しがしやすい資産の最たるものになる。金融緩和はカネ余り状態を作るので、不動産価格は原則上がっていく。単純に言って、金融緩和は不動産インフレを必ず招いてきた。この状況はコロナ前後でも変わっていないので、不動産インフレは止まりそうにない。このように住宅ローンの金利水準や貸出の積極性が不動産価格を決めるので、需給バランスの影響は軽微だ。