日本の不況時に7割の企業が株価上昇を記録

僕は「ベンチャービジネスの創り方」をテーマに、大学で講義を行っています。誰もが知っている、偏差値が高い有名私立大学です。

あるとき、講義が終わった後に学生から提出してもらったレポートに、こんなことが書かれていました。

「藤野先生、どうして僕たちに起業家になることやベンチャー企業に就職することを薦める講義をするんですか? 僕たちは○○大学の学生なんだから、大企業に就職できるのは確実なのに。わざわざハイリスクな道を薦める意味がわかりません」

彼は、きっと本気で、僕を不親切な先生だと思ったのでしょう。でも、僕は本当に彼にとって有益な情報と知恵を与えるつもりで講義をしていたのです。

どういうことか、説明しましょう。

まずはクイズです。

株式市場に上場している会社のうち、2002年から2012年までの10年間で株価が上昇した会社はどれくらいあったでしょう?

(1)20%
(2)30%
(3)70%

答えてもらう前に、一つ補足します。2002年からの10年間は日本が長引く不況で苦しんでいた時期です。

「ボーナスカット」、「派遣切り」といった穏やかではない言葉がニュースで連呼され、その前の10年間も含めて「失われた20年」などと呼ばれていました。

そういった背景から、このクイズを出すと、答えは大体(1)か(2)に集中します。不況だったというイメージのせいでしょう。

ところが、答えは(3)。なんと7割の企業が株価上昇を記録していたのです。

一方、日本を代表する大企業の株価は低迷

しかも、株価を上げた企業のうち7割については、10年間で株価が2倍以上、利益も2倍以上になっています。

ざっくりと、利益とは「儲け」のことで、株価とは「会社の実力と人気を反映した世の中からの評価」だとイメージしてください。

7割の7割だから、全体のほぼ半分。

つまり、「失われた」と言われてきた2002年から2012年の10年の間に、日本の上場企業のうち7割が成長していたし、5割の企業が利益も株価も2倍以上伸ばしていたということ。素晴らしい成長ですよね。

次に、今説明した「日本の上場企業」の内訳を会社の規模ごとに見てみましょう。

実は、大型株=大企業の数は全体の4%しかないんですね。

残りの96%は、中小企業。10年間で成長していた企業のほとんどが中小企業だったことがわかります。ちょっと意外ではありませんか?