本当に今が家を買うラストチャンスか

【高橋】去年の夏以降、コロナの影響で収入が減った人が、どんどん増えています。飲食店の人は、本当に大変で、これから任意売却や破産が、急増すると思います。

【太田垣】住居確保給付金が切れたり、いろんな給付が切れて、実際に仕事も収入も失ったり。でも、そんな中、去年は登記の案件がすごく多かったんですよね。みんな、コロナ中に不動産をすごく買っていたんですよ。この先、たぶん年収が下がるだろうから、前の年の年収でローンを組めるのがギリギリで、このタイミングを逃すと家を買えなくなるからと言うんです。

【高橋】そういう人は多いですね。

【太田垣】もちろん、資産家の人たちは全然コロナの影響はないのですが、一般の人が、家を買うラストチャンスと言って、みんな35年ローンで買っているんですよね。なんだか近い将来、破綻するんじゃないかと心配になっちゃう。

【高橋】確かに不動産業界は、ホテル関係はダメージが大きかったようですが、それ以外の一般向けの物件は、そこまでの打撃はありませんでしたものね。お客様の中には今のうちに、源泉徴収が出るうちに買っておこうみたいな人もいました。

【太田垣】でも、それこそ怖くないでしょうか?

【高橋】本当に危ないですよね。もうオーバーローン確定ですよね。

【太田垣】なのに、そういう人たちは、滑り込みセーフで家を買えたと、無邪気に喜んでるわけです。

【高橋】家を買っておけば大丈夫みたいな安心感が彼らにはありますよね。

「何とかなる精神」で駆け込み買い

【太田垣】ここから35年、ずっとローンを返済していかなきゃいけないのに。昔は、それこそ定年時に退職金がたくさん出たので、退職金で住宅ローンを全部完済して、年金の額も多いし、それなりに貯金もあったけど、今は退職金も出るかどうか分からないし、年金もどんどん削られているような経済状況の中で、35年を駆け込みで買うというのは……。

【高橋】何とかなる精神なんだと思います。実際、私のところに相談に来る人に、「どうして、この物件を買って、こんなローンを組んだんですか?」と聞くと、「その時は若くて(30代・40代で)、仕事もあるし体も元気だったから、何とかなるって思ったんです」って、絶対言うんです。

【太田垣】でも、全然何とかならなくなって、高橋さんのところに相談に来るわけですよね。

【高橋】買うときに、「頭金がなくても、フルローンで35年、長く組んで毎月の返済額を減らしておけば、何かあったら保険で返済がチャラになるし、繰り上げ返済すればいいし、退職金で完済すればいいんですよ」と言われると、「あ、そうか」ってなってしまうんですよね。

【太田垣】でも、繰り上げ返済って、普段の生活をしていると、なかなかできないですよね。

【高橋】夫婦合算でフルローンで組んで、奥さんが妊娠出産で産休や育休退職をして収入が下がったり、教育費もかかるし、家具や電化製品など何かと出費があったり、生活レベルを落とせずに何か買ってしまったり。自分たちの未来を見通したり、計算のできない人たちが、タワマンのような高値の物件を背伸びして買ったりするのは危ないです。