市場が大きくなると声を上げやすくなる

考えてみれば、私もこれまで、男性読者が多いビジネス関連の媒体で、女性のセンシティブな話題に関する記事を書く機会はほとんどありませんでした。

ですが、そこに「市場(マーケット)があるだろう」となれば、企業や男性も、市場特性を理解しようと注目し始める。これまで「言いにくい」としてガマンしてきた女性たちも、「自分の経験が役に立つなら」と、少しずつ声を上げるようになります。

いまから17年前(04年)、私が『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞出版社)という本を書いた頃も同じでした。一部から「そんな市場が成立するのか?」と懐疑的な声が上がり、大手旅行代理店で講演した際には、「女性がひとりで泊まりに来れば、多くの旅館が『自殺しに来た』と思うに決まっている」と批判されたほどです。

声に出さずとも欲していた「女性のひとり旅プラン」

ですが女性たちは、声に出さずとも欲していました。「疲れたとき、ひとりでふらりと訪れて、自分を癒やしてくれるような温泉旅館があればいいのに」と。

そしてその後、全国の宿泊施設が「女性ひとりプラン」を展開するようになったことで、市場はどんどん拡大していきました。

なぜならそれまで、女性が漠然と「あったらいいのになあ」と封じ込めてきた潜在ニーズが、多くの企業が魅力的な商品プランを生み出したことで、初めて「欲しい」という欲求へと昇華したからです。

これが、マーケティングでいう「Needs(ニーズ)」と「Wants(ウォンツ)」の違い。

フェムケアでいうと、「ニーズ(必要性)」は、「もっと快適なショーツがあったらいいのになあ」との心理。その次の段階の「ウォンツ(欲求)」は、具体的に「あのショーツが欲しい」と切望する欲求で、ここがマーケティングの腕の見せどころです。

ニーズ(必要性)からウォンツ(欲求)へ