「成功」しても「つながり」を失っては…
今度は、毎日残業続きの仕事人間について考えてみましょう。夫婦、家族で一緒に食事する時間もなかなかとれない。さらに、家族(妻子)に対するケアがほとんどないとしたならば、妻から離婚されたり、子供が不登校やひきこもりになったり、非行に走ったりすることもあるでしょう。
「家族のつながり」を軽視して、仕事で頑張りすぎると、ろくなことにはなりません。どれだけ仕事で成功しても、妻に離婚され、子供からも毛嫌いされてしまっては、「幸せ」とは言えません。
つまり、「つながり」と「成功」では、「つながり」が先で「成功」は後。「つながり」「人間関係」を無視して、成功を目指して我武者羅に努力しても、その先には「幸せ」は待っていない。オキシトシン的幸福が先で、ドーパミン的幸福は後なのです。
心身の「健康」こそが全ての基盤
優先すべき順番がだんだんとはっきりしてきました。では次に、「つながり」と「健康」ではどうでしょう?
あなたは仕事も順調で、「家族と一緒に最高に幸せな生活」をしていたとしても、ある日突然、「がん」を宣告されたとしたらどうでしょう。それでも、「最高に幸せ」と言えますか? 言えませんね。自分の健康があってこその、「つながり」です。
あるいは、あなたのお子さんに「難病」が見つかったとしたら? 毎日、そのことで頭が一杯になります。幸せな毎日が、「不安」と「心配」に包まれた毎日に一変するのです。「健康が大切」という場合、「自分の健康」も大切ですが、「家族の健康」もなければ幸せにはなれません。
メンタル疾患の患者さんに、「家に閉じこもってばかりいないで、たまには友達とお茶にでも行ったらどうですか?」と言うと、「こんなに調子が悪いのに、人と会えるはずがないです!」と厳しい口調で反論されます。メンタル疾患になると、「友達と会って30分話す」という、当たり前のコミュニケーションすら困難になります。あるいは、メンタル疾患になると、「沈没間際の船からネズミがいなくなる」かのように、以前からの友人がサーッといなくなるのです。
セロトニン的幸福を失うと、連鎖的にオキシトシン的幸福も失います。夫婦、パートナー、親子の愛情。友人、仲間とのつながり。全て、あなたの「健康」があってこそ成立します。つまり、「健康」が先で、「つながり」が後。セロトニンが先で、オキシトシンが後なのです。