面積を縮小したり、本社機能を移す企業も

しかし、コロナ禍の中でそうした常識は崩れ、オフィスの形態は大きく変化している。感染対策としてテレワークを導入する企業が増えた結果、自宅、あるいは外出先で業務を行うことは当たり前になった。つまり、集約的に運用されてきたオフィスの機能は、郊外の自宅など複数の場所に分散し始めている。

その影響は大きい。企業にとって、従来の規模のオフィスを維持する必要性は低下した。それが、わが国企業がオフィス面積を縮小したり、本社ビルを売却したりする要因の一つだ。また、オフィス運営コストの削減などのために、地方に本社機能を移す企業もある。テレワークによって個人は通勤から解放され、より有意義に自己の能力の向上と発揮を目指しやすくなっている。そうした利点を生かすために在宅勤務を標準の勤務体系として扱う企業も出始めた。

モダンなオフィス
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その一方で、新しい事業戦略の立案などには、ビデオ会議よりも直接会って議論を交わすことが欠かせない。テレワークとオフィスでの活動、両方の利点を生かすために多くの企業が新しいオフィスの形態を目指して試行錯誤を重ねている。

分散を進めるアマゾンのオフィス運営戦略

その中で注目したいのが、米IT先端企業のオフィス運営戦略だ。その一つの例として、アマゾン・ドット・コムのオフィス運営を考えたい。同社は2020年8月、ニューヨークやダラスなど6都市へのオフィス拡大に14億ドルを投じると発表した。アマゾン以外にも、ワークプレイスの分散を重視するIT先端企業は多い。

新型コロナウイルスの感染の発生と拡大は、世界経済のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させた。アマゾンは、クラウドサービスやネット通販のプラットフォーマーとして需要を獲得している。その一方で、ITプラットフォームの利用者の増加に伴って、ハッキングをはじめとするサイバー攻撃(犯罪)の増加が世界的な問題になっている。

そうした問題にアマゾンはIT専門家の採用を増やし、デジタル技術の活用と人海戦術の両面から対応しようとしている。それに加えて、ユーザーの満足感の向上や新事業の創出のために、同社はより多くのウェブ・デザイナーやデータ・サイエンティストなどの専門家を必要としている。