自分を認めてもらいたかった新卒時代

けれど、最初から全てに満足できていたかというと、当然そうではありません。入社してすぐに配属されたのは「Mobage(モバゲー)」のアバター事業でかなり歴史のある既存事業の部署でした。新規事業の部署で働くことを志望していたので、正直、とてもショックでした。

秋元里奈『365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘』(KADOKAWA)
秋元里奈『365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘』(KADOKAWA)

でも、どんな部署にいたとしても結果が求められることに違いはないですし、むしろそこで結果を出さなければ希望が通るわけもない。まずは自分を認めてもらうためにがむしゃらに働きました。既存事業とはいえ日々新しいチャレンジがあり、楽しく必死な日々。

そして同時に積極的に他部署の方たちとの交流を図り、新規事業のアイデアを提案し続けました。すると、別部署への異動が決まったのです。

そこからはマッチングビジネスの立ち上げや、マネタイズで苦しんでいる社内の新規事業のセクションなどを任されました。特に印象に残っているのは、このマネタイズ案件です。そもそもどうすれば苦しんでいる事業がマネタイズできるのかを考え、企画し、サービスのディレクションやテレアポ営業、広告の提案など、幅広い業務に携わりました。

サービスを存続させるためにはプライドなんて持っていられない。なにもかもを捨てて、必死に仕事に打ち込む。忙しい日々でしたが、自分がどんどん成長できていることを実感していました。

「本当にやりたいこと」を仕事にできているのか

DeNAでの日々はとても刺激的でした。けれど、3年ほど経つと、周囲でも転職して新しい道に進み始める人たちが現れます。彼らの姿を見ているうちに、わたしも自分自身を振り返るようになっていきました。

自分のアイデアを形にしたい。そんな仕事に就いて、やりがいを感じたい。そう思ってDeNAに入社したものの、わたしは「本当にやりたいこと」を仕事にできているのだろうか。DeNAでは4つの事業を経験しました。どれも面白く、夢中になって働けたのは事実です。

でも、その事業領域に一生を捧げることができるかというと、首を縦には振れません。心の底から熱狂できるものがあるはずだ。その予感をはっきりさせたいと思ったわたしは、異業種交流会などに積極的に参加し、社外の人とコミュニケーションを深めていくようになりました。そして、それがわたしの人生を大きく変えていくことになりました。

ある異業種交流会で出会った人と話していたときのことです。実家が農家だということを打ち明けると、「せっかくなら、その農地を活かしてお祭りを企画しよう」と盛り上がりました。農業とは離れたところまで来たけれど、こうして農家と関わることもできるのか。面白いと思ったわたしは、久しぶりに実家の農地を訪れることにしました。