大手町の大企業と渋谷のITベンチャー、転職するにはどちらがいいのか。リンクトイン日本代表の村上臣氏は「会社名だけで転職先を選ぶと、その次の転職で苦労する。それよりも自分に合った会社を探したほうがいい」という――。

※本稿は、村上臣『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

丸の内と渋谷
写真=iStock.com/yoko_ken_chan、tapanuth
※写真はイメージです

「有名な会社×自分に合うポジション」は滅多にない

転職する際、皆さんは会社をどういう基準で選んでますか。

かつては「会社」で就職先を選ぶという発想が主流であり、転職する際も会社で選ぶ傾向が一般的でした。

会社で選ぶとは、わかりやすく言うと「就職人気ランキングの上位企業だから入社する」「親が知っている有名企業だから入社する」ということ。仕事の内容よりも会社のブランドを優先させる考え方です。

しかし、会社で選ぶことのデメリットは、次の転職の可能性を極端に狭めてしまうところにあります。

「有名な会社で働くこと」に価値を感じている人は、転職するときも有名な会社を目指そうとします。有名な会社であり、かつ自分に合うポジションが用意されている確率を考えると、よほどのことがない限り、転職に踏み切ることは難しくなるのです。

会社と人材が利用し合う「シナジー」が大事

これからの時代の会社選びに大事なのは「シナジー」です。「シナジー」とは何かと言えば、会社と働く個人が良い意味でお互いを利用し合うということです。

これまでは「会社が人材をどう活かすか」という視点ばかりが強調され、「従業員が会社をどう利用するか」という視点は希薄でした。しかし、これから会社と個人がフェアな関係を築いていく上では、お互いがお互いをいい意味で利用し合う関係が重要となります。

個人が何らかの目標を持ち、目標を達成するための場として会社を利用する。

これに対して会社側は、パフォーマンスを発揮してくれるのならどんどん会社を利用してくれて構わないというスタンスを取る。

お互いにコミットした期間内は全力で貢献し、お互いに役割を果たしたと感じたならば、離れるという選択肢もよしとする。

これからプロジェクトベースで仕事が進むようになり、雇用の流動性が高まれば、このように会社と個人がシナジーに基づいた関係性を志向するようになるのは必然と言えます。

能力がある人は、常に業務を通じて経験を積み、スキルアップをしたいと望んでいます。彼らは大きな課題を抱える会社に働きがいを見いだし、課題のない会社には在籍する意味を見いだしません。

例えば、エンジニアなどが、新規事業を立ち上げようとしている会社に転職し、事業が軌道に乗ったタイミングでまた別の会社に移る。このような会社の選び方が増えていくのではないかと予測しています。