大衆薬事業のタケダ全体に占める割合は数%

武田薬品工業は2019年にアイルランド製薬大手シャイアーを6兆円超の巨額で買収した。スイスのロシュや米ファイザーといった「メガファーマ」と戦える競争力を備えるグローバル企業への転身が狙いだったものの、その後は有利子負債が膨らみ既存事業の売却を迫られた。

2020年8月に大衆薬事業の売却を発表した際、クリストフ・ウェバー社長は「大きな変革には痛みを伴うが、乗り越えなければ事業の持続的成長という未来を実現できない」とのコメントを出し、売却で得た資金は有利子負債の圧縮に充て、財務面の立て直しを目指している。

高いブランド力のある商品を抱えるとはいえ武田薬品工業の総売上高に占める大衆薬事業の比率は数%にすぎない。医療医薬品に注力する現経営体制にあって、かねてから大衆薬事業は戦略上の課題に挙がっていた。

昭和電工は社運を賭けて日立化成を買収

2021年1月28日にアルミニウム事業の売却を発表した昭和電工も、事情は巨額買収によって財務状況が悪化した武田薬品工業が陥ったケースと似通う。

昭和電工は2020年に日立製作所のグループ「御三家」に当たる日立化成(現昭和電工マテリアルズ)を約9600億円で買収した。その結果、悪化した財務基盤の改善に向けて2000億円規模の事業を売却する方針で、事業ポートフォリオの組み替えが迫られる。

売却を決めたのは飲料缶と電子部品に使う圧延品のアルミニウム事業で、米投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントに売却する。売却額は明らかにしていないものの500億円を超えるとみられ、2021年8月以降の売却手続き完了を予定する。

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昭和電工にとって1兆円に迫る日立化成の買収は社運を賭けた決断といえる。日立化成の買収を発表した2019年12月の会見で、昭和電工の森川宏平社長は、半導体や情報電子材料分野に強い日立化成を取り込むことは、「世界トップクラスの機能性化学メーカーになるチャンス」と語っていた。

ただ、買収資金のほとんどは借入金で賄ったため財務体質の改善は急務であり、アルミニウム事業の売却はその第1弾となった。今後も事業売却など事業ポートフォリオの組み替えは避けられない。