知名度は高いが、収益力は低かった資生堂の日用品事業

資生堂が日用品事業を欧州系投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズに1600億円で売却すると発表したのは2月3日のことだった。資生堂の日用品事業は看板商品のヘアケアブランド「TSUBAKI」のほか男性ブランドの「uno(ウーノ)」などを抱える。売り上げ規模は2019年12月期で1053億円と資生堂全体の9%を占める。

資生堂
写真=iStock.com/Vincent_St_Thomas
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有名俳優を起用したCMなどで資生堂のブランドイメージを高めた商品をそろえ、経営上決しておろそかにできない存在に映る。しかし、主力の化粧品事業に比べ収益力は低く、競争力のある高級化粧品に経営資源を集中する狙いで事業売却に踏み切った。

翌週2月9日に最終損益が116億円の赤字に陥った2020年12月期連結決算と新たな中期経営計画(2021~2023年度)を発表した記者会見で、魚谷雅彦社長は事業ポートフォリオの見直しなどを通じ、「中計の最終年度での完全復活」を宣言した。

大手が先を争うように事業ポートフォリオの組み替えに大ナタ

資生堂に限らず、この数カ月で日本企業による事業売却・撤退の発表が相次いでいる。

1月7日にはブリヂストンが、米国の建材事業のファイアストン・ビルディング・プロダクツ・カンパニーをスイスの建材メーカー、ラファージュホルシム(ザンクトガレン州)に売却することでに売却すると発表。

※編集部註:初出時、売却先の社名が間違っていました。訂正します。(3月26日16時55分追記)

1月28日には、昭和電工がアルミニウム事業を米投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントに売却すると発表した。

さらに、2月1日、パナソニックは完全子会社化した旧三洋電機がかつて世界市場で覇権を争った太陽電池の生産から2021年度中に撤退すると発表した。

名だたる大手製造業が先を争うように事業ポートフォリオの組み替えに大ナタを振るっているのは、なぜか。日本企業の背中を押したのは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い不確実性がより高まった事業環境にある。パンデミック(世界的大流行)にまで発展し、終息の見通しすら立たないコロナ禍が、企業に現実を直視させたのだ。