暴力団のマフィア化や元暴アウトローの犯罪増加の懸念も

そうすると、離脱者には社会的居場所がありません。人間は社会的動物ですから、一人では生きられません。「居場所」や「受け皿」は、暴力団離脱者に限らず、我々人間には誰しも不可欠なのです。

さらに悪いことに、「かえってこれらの団体や者たちを追い込み、暴力犯罪をエスカレートさせかねないのではないか」という又市議員の指摘通り、組員を偽装離脱させてシノギを模索する暴力団のマフィア化や、暴力団を自らの意思で真正離脱したものの、社会復帰に失敗し、犯罪のプロティアン化を実践する元暴アウトローの犯罪増加が懸念される事態が生じています。

犯罪のプロティアン化とは、「プロティアンキャリア」というキャリア学用語の応用です。本稿においては、犯罪の既存スキルを応用し活用することを指します。つまり、暴力団在籍時に覚えた手練手管を、暴力団離脱後も、様々な犯罪に応用し、活用することです。

暴力団離脱者も依然として犯罪性向が高い

元暴の検挙率について警察庁の資料を見てみましょう。

警察庁によると、「破門状を受けるなどして暴力団員でなくなった者について、平成23(2011)年に暴力団を離脱した2634人のうち、その後2年間で検挙された者は681人(1年当たりの1千人当たりの検挙人員は129.3人)となっているほか、平成23年から平成27(2015)年に離脱した者のうちその後2年間で検挙されたものは2660人で、1年当たりの1千人当たりの検挙人員は144.6人となっている。これは、平成28(2016)年における暴力団構成員の1千人当たりの検挙人員(254.8人)より低いものの、同年における人口1千人当たりの検挙人員(2.3人)よりもはるかに高い水準である。
……暴力団構成員は減少傾向にあるものの、暴力団を離脱した者についても依然として犯罪性向が高い状況が見受けられる(傍線筆者)ことから、就労支援等の社会復帰対策を一層推進するなど、総合的な治安対策が必要であるといえる」と結論しています(警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」)。

2011年から15年に離脱した暴力団員のうち、その後2年間で検挙された者の比率は、全体の約60倍という高率であることが見て取れます。