老後の2000万円は「退職金込み」で目指すもの

もし1000万円のゴールにたどりつく積立定期預金や積立投資をしていたとして、「通帳を忘れた」とか、「残高をチェックせずに30年放置している」とかいうのは考えられません。銀行選びも慎重にするはずです。退職金を知らないで働いている、というのはそれと同じことです。

それに「老後に2000万円」問題をまじめに考え、対策をたてる場合「(退職金や企業年金)+(iDeCoやNISAなどの自助努力分)」の合計で2000万円超えを目指すのが自然です。これが「退職金抜きで2000万円超え」を目指すとすれば、現役時代にかなり無理をした資産形成を行うことになります。

退職金額を知らずに老後の資産形成を行うということは極めて危険です。なぜなら、老後資金の目標額を高く設定したため、金融商品などを購入する際、過剰なリスクテイクをしてしまう恐れがあるからです。運用のリスクを高くしすぎると、急落時などに回復不能な痛撃を食らうこともあります。

山積みになった札束
写真=iStock.com/Bet_Noire
※写真はイメージです

あるいは、あまりの目標額の高さに、「どうにでもなれ」「何とかなるさ」と思考停止して貯蓄などの取り組みを断念する人もあるでしょう。退職金を知るかどうかは、マネープランの重要な一歩なのです。

退職金制度の有無と金額を自力で確認する方法

退職金・企業年金制度は各社各様です。公的に一律の積立ルールがあるわけではありません。言い換えれば、社内で情報源をたどることが「自分の退職金」について知る唯一の方法ということになります。

まずは自分の会社で退職金規程を探してみてください。以前は紙に印刷したものが総務や人事部に置かれていることが多かったですが、今はイントラネットや共有フォルダにおいて閲覧する形が主流のようです。誰かの目を気にすることなく、規程を閲覧できます。

退職金の一部ないし全部を企業年金化している場合は、確定給付企業年金の規約、ないし企業型確定拠出年金の規約も設定され、公開されています。

これらの規約や規程をチェックすると「毎月の掛金積立のルール」が記載されています。また「受取額の計算方法」も書かれています。ただし計算に必要な情報が不足していて自分の金額を推定できないこともあります。

会社の標準的な退職金額(モデル退職金という)については、社内の福利厚生の説明資料や労働組合の資料などで開示されていることがあります。過去に確定拠出年金に制度変更したときなどの説明資料も閲覧できればそこに記載があります。

どうしても分からない場合は、人事労務担当に同僚や顔見知りの先輩があれば「ざっくりどれくらいなんですかね」と聞いてしまうのもいいでしょう。「最近辞めた誰々さんがいくらだった」とはいえませんが「まあだいたい○△万円くらいかな」くらいは教えてくれるかと思います。