事前のイメージと実際の会話の「絶妙なズレ」がポイント
先生と、この会話をした後、3人は、「A先生って結構、おもしろい人だったんだね」と、お昼を食べながら会話をしたことでしょう。
そうなる理由は、3人それぞれが思い描いていたA先生の人物像と、今回A先生が話した内容が、絶妙にズレていたからです。つまり、「異常なことが、あたかも普通のように行われている」状態になっていたのです。
重要なのは、あなたがおもしろいと思うかどうかではなく、聞き手がどう思うかです。といっても、理解できない人も多いと思うので、なぜ3人が「A先生っておもしろい人だな!」と感じたのか、詳しく解説していきたいと思います。
それぞれにイメージとの「ギャップ」があった
まずあなた(夫)は、A先生を寡黙で真面目な先生と認識していました。にもかかわらず、A先生は気さくに、自分自身のことについて話し始めました。この時点で、すでに「ズレたカツラ理論」が成立しています。
ですから、あなたはA先生がどんな内容の話をしたとしても、「この人、思ったよりも感情豊かに自分のことをしゃべるんだな」と思うはずなので、A先生のことをおもしろいと思うのです。
一方、妻はA先生のことを「愛想の悪い人」として、快く思っていなかったはずです。しかし今回出会ったA先生は、とても愛想がよく、自分が好きなカップラーメンの話を一生懸命にするような人でした。それは妻からすると、相当な異常行動に見えるので、何を話してもおもしろいのです。
これはまさしく、明らかにズレたカツラをかぶっているのに、あたかも普通に振る舞っている社長と同じ状態です。話の内容の良し悪しを越えて、A先生の話がおもしろいと感じてしまうのです。
最後に息子は、A先生のことを「ただのお金持ち」だと思っていました。だから、勝手な想像で、A先生は食にもうるさく、贅沢三昧だと思っていたのですが、実際にはA先生が大好きなのはカップラーメンで、しかもそれに対する愛情を、惜しみなく語り始めました。これは、息子にとっては、シャイで寡黙な友人が、急に裸踊りでも始めたかのような衝撃です。だから、A先生の話がおもしろいと感じたのです。