ベゾスの行動は「離婚の年」から大きく変わっている

ベゾスは現在、世界一の資産家とされていますが、これまであまり社会活動には熱心ではありませんでした。アマゾンという企業も長年、マーケティングへの評価では企業ランキングの上位にあるのに、CSR、ESG、SDGsなどのランキングでは低い順位に留まっていました。それがなぜ、突然変わったのでしょうか。

Amazon.comフルフィルメントセンター
写真=iStock.com/jetcityimage
※写真はイメージです

私は、今回の退任と活動のシフトにつながる分岐点として大きかったのは、マッケンジー夫人との離婚だったのではないかと感じています。

2人の離婚は2019年1月に発表され、同年4月に成立しています。その結果、マッケンジーさんは、アマゾン株の4%に当たるおよそ383億ドル(約4兆1500億円)相当の資産を受け取ることになりました。その後、マッケンジーさんは離婚成立後に、総額185億ドル(約2兆円)を慈善事業に寄付すると発表しました。さらに翌20年7月に17億ドルを、それから12月までの間にも42億ドル(約4200億円)を寄付しており、今や慈善活動家として知られるようになっています。

ベゾスの行動が変わったのは、この離婚の年からでした。

「このままだと滅びかねない人類を救う」という壮大な意思

離婚から4カ月後の2019年9月には、アマゾンCEOとして「気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)」に調印しています。この誓約は「2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする」ことを掲げたもので、アマゾンはGAFAはもちろん米国企業の中でも、もっとも早い時期にカーボンニュートラルを宣言したのです。その後の2020年2月には気候変動対策を目的とする、基金100億ドル(約1兆円)の「ベゾス・アース・ファンド」を設立しています。

ベゾスのアマゾン起業はもともとは私欲追求の面が強かったと私は見ていますが、その行動原理は2019年以降、明らかに変わってきています。今のベゾスは「このままだと滅びかねない人類を救う」という壮大な意思のもとに動いており、そこにはやはりマッケンジーさんの影響が強く感じられます。気候変動対策においてもGAFAの他の企業には負けたくないという競争心も行動原理に働いていると思います。

ベゾスのCEO退任の理由としてもうひとつ考えられるのは、このところ強まっているGAFAへの逆風です。