共和党と民主党の意見が一致する「GAFA叩き」

GAFA批判はアメリカでも勢いを増しており、2020年にはそのCEOたちが一斉に上院の公聴会に呼び出され、ベゾスも辛辣な言葉を浴びせられています。

それまでは民主党側がGAFAにきびしかったものが、トランプ政権の終わり近くになってGAFAがトランプ個人のアカウントを凍結したことで、親トランプの共和党保守派もGAFAに強い憎悪を抱くようになっています。今や共和党と民主党の意見が一致する数少ない政策が「GAFA叩き」なのです。

ベゾスもアマゾンのトップでいるかぎり、今後も議会に呼び出されたり、批判を浴びせられることは避けられないでしょう。プライドの高い人なので、「もうそういう目に遭いたくない」ということも、本音の部分ではあったと思います。

後任はアマゾン最古参の一人で、DNAを完璧に受け継ぐ人物

ベゾスというカリスマ創業者の退任は、アマゾンのビジネスにどう影響するでしょうか。

実は私は今回の決断は、アマゾンにとってもプラスに働くだろうと感じています。

ベゾスは2017年のアニュアルレポートに添付した株主レターに、「いかにして大企業病からアマゾンを守るか」という話を書いています。そのための方法論のひとつが、「重要な問題以外の決定権はどんどん委譲していくこと」でした。

権限委譲の目的は意思決定を早くすることです。もともとそういう考えで経営しているので、ベゾスがCEOから会長になるとは、「経営の決定に関与する際のハードルをもう一段上げる」程度のことなのです。

新しいCEOのアンディ・ジャシーは、1997年にハーバード・ビジネススクールを卒業してすぐに、創業間もない時期のアマゾンに入社しています。アマゾン最古参の一人であり、ジェフ・ベゾスの経営者としてのDNAを完璧に受け継ぐ人物です。今回のCEOの交代で、アマゾンの経営が大きく揺らぐことはなく、むしろエンパワーメントによって意思決定スピードはさらに早くなるでしょう。