クラウド事業でマイクロソフトを突き放したい

「今回のCEO交代は、アマゾンの危機感の表れである」という見方もあります。

今回の交代はアマゾンがコロナ禍の下で最高益を達成したタイミングで発表され、その意味では「花道」となるわけですが、ベゾスの視点に立って周囲を見回すと、小売業ではウォルマートがDXに成功してアマゾンを追ってきており、クラウドビジネスではマイクロソフトが急激にシェアを伸ばしています。数字上は最高益でも、ライバルたちがすぐ後ろから迫っている状況なのです。

フランスのマイクロソフト本社
写真=iStock.com/HJBC
※写真はイメージです

そんな中で新CEOにジャシーが起用された理由は、彼がアマゾンのクラウドビジネスAWS(Amazon Web Services)を立ち上げた人物であり、同事業のトップだということが大きいでしょう。

AWSはアマゾンの事業の中でももっとも成長が期待されるビジネスです。しかし、これまでベゾスの下には3人の経営幹部が同レベルで並んでいて、組織としての意思決定が遅れがちとなり、クラウド分野でマイクロソフトの追撃を許していました。

AWS担当のジャシーをCEOに引き上げたことでクラウド事業の展開が加速すれば、マイクロソフトを突き放す未来も見えてくるはずです。

「製造現場のDX」にも参入してきた

日本ではあまりニュースになりませんでしたが、アマゾンは2020年12月、「アマゾン・モニトロン」によって、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に進出しました。モニトロンは設備保全のためのセンサーをAIとセットで提供し、製造現場の設備故障を事前に予測するサブスクリプションサービスで、これを開発したのもAWS部門です。

これまで日本では、「製造現場のDXはGAFAの手の及ぶ世界ではない」と信じられてきました。ところがそこにアマゾンが参入してきたのです。

モニトロンが謳っているのは表面的には顧客へのサポートですが、本当にやろうとしているのは、製造業がこれからやろうとしているDXを先取りし、製造業のエコシステムをプラットフォーマーとして支配し、産業の覇権を握ることです。

アマゾンは今後もこうしたかつてないサービスの提供によってプラットフォーマーの地位を確立し、これまで以上の成長を続けていくものと、私は予想しています。(文中一部敬称略)

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