アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が、最高経営責任者(CEO)を退任すると発表した。ベゾス氏の動向を追い続けてきた立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「退任の背景には公私における2つの大きな変化があるのではないか」と指摘する——。

※本稿は、2月3日にClubhouseで行われた公開インタビューの内容を再構成したものです。

離婚を決めた米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏(左)とマッケンジーさん
写真=AFP/時事通信フォト
離婚を決めた米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏(左)とマッケンジーさん=2018年4月24日、ドイツ・ベルリン

ベゾスのメッセージにある「事業の順番」が非常に重要

私は筋金入りの「ベゾス・ウォッチャー」です。ジェフ・ベゾスが出演した動画はほぼ見ており、ベゾスが株主に向けて書いたレターや取材で述べたコメントなども、可能な限りすべてウォッチしています。

それだけに米国時間2月2日に発表された、「ベゾスは2021年内にアマゾン最高経営責任者(CEO)を退任し、取締役会長に就任する」というニュースを聞いたときは、少なからずショックを受けました。

今回の退任にあたってベゾスがアマゾン従業員に宛てたEメールが、ネット上にアップされています。そこには、

「会長になることで、引き続きアマゾンの重要な新規事業に従事しながら、デイワン・ファンド、ベゾス・アース・ファンド、ブルーオリジン、ワシントン・ポスト、その他の情熱に時間とエネルギーを注ぐ」

とあり、ここからCEO退任後にベゾスが行おうとしている活動の内容を推し量ることができそうです。

ベゾスはこれまで何度も、「自分は宇宙事業をやるためにアマゾンを立ち上げた」と語っています。そこから考えると、「まずは宇宙事業会社のブルーオリジンに注力するのではないか」と感じますが、今回のメールでは宇宙事業は、教育支援や恵まれないファミリーを支援する慈善活動基金の「デイワン・ファンド」、気候変動対策を行う「ベゾス・アース・ファンド」に続いて3番目に挙げられているに過ぎません。

ベゾスは話すときも書くときも順番を重視する人なので、メールに示されたプライオリティを見るかぎり、今後は宇宙事業もさることながら、社会活動的なファンドの運営により大きな力を入れていくもではないかと予想しています。これまで「カスタマーセントリック(顧客中心主義)」を掲げ、ひたすらビジネスに突き進んできたベゾスが、ここにきて「社会問題を解決する」という方向に大きく舵を切ったことが感じられます。