「忙しい自慢」と「寝ていない自慢」
多くの場合、次に自慢話が続く。功績や手柄の自慢だけなら、まだ、戒めることはできる。自戒しにくいのは、次の二つである。
「忙しい自慢」と「寝ていない自慢」。私にも経験があるから、偉そうには言えないが、本人の意識は「疲れているから休みたい」と言いたいだけなのである。決して自慢している自覚はない。
しかし、聞かされている方は同僚であれば実績を自慢しているとしか思わない。フリーの仲間ならば「いいねえ、そんなに仕事があって。羨ましいよ」となる。自慢話にしか聞こえないのだ。
仕事が立て込んでいても、「忙しい」という言葉を言わなければよい。「貧乏暇なし」と言ったところで、「仕事がたくさんある」の意味に聞こえる人もいる。自分が昨夜寝ていなくても、目の前にいる人には関係のないこと。目がしょぼついていても、誠意を尽くすほかない。呑みながら寝てしまったときは、相手も許す他ないから、許してくれるはずだ。
このあたりのことは、観客、演出家の目で自身や周囲を観察すると修正できる。会社が舞台の演劇や映画を想像してみてほしい。
そこで「前に教えたよね」「寝る暇もなくてさ」と登場人物が第一声で発したらどうか。観客は「この人は口やかましい先輩役だな」「忙しい自慢のうざい男だな」と瞬時に感じるはずだ。
「ここだけの話」と言ってはいけない
典型的な嫌われワードの一つに「ここだけの話」がある。
「ここだけの話」というのは基本的にスクープである。人が知りたい秘密情報が「ここだけの話」となる。どの程度信憑性があるかわからないが、皇室の話はかなり漏れ聞こえてくる。恐らく、宮内庁担当の官僚や記者が「ここだけの話」をしているから漏れるのである。
秘密を共有すると、相手との距離感が急速に近くなる。人にできない話を自分だけに聞かせてくれているのだなあ、と思えるから相手を信じやすくなる。
その原理を使って、それほどでもない情報を「ここだけの話」として使い、相手に自分を信頼させるのを、「ワザ」として使っている人も見かける。社内の人事情報をいち早く耳打ちする、というようなことだ。
儲け話などでも「ここだけの話」がよく出てくる。インサイダー取引の場合もあるし、マルチ商法の場合もある。ここまでくると犯罪に近いが、「ここだけの話」は相手と手っ取り早く仲良くなれるマニュアルなのである。しかし、ある程度知られたマニュアルになった段階で、それは「決め技」にはならないし、相手には「浅薄な奴だ」と見抜かれてしまう。