「寒い冬」を迎えた香港

クリスマスから年末年始にかけ、日本を含む各国が新型コロナウイルス対策に追われるさなか、香港では「さらなる民主派への締め付け」が着々と進められている。

2020年11月、香港での違法集会の容疑で裁判所に出廷した周庭氏
写真=NurPhoto via AFP/時事通信フォト
2020年11月、香港での違法集会の容疑で裁判所に出廷した周庭氏

年末には日本への支持を日本語で求め続けている周庭(アグネス・チョウ、24)氏が、凶悪犯が入る刑務所に移送されたと報じられたが、新年を迎えて今度は50人を超える民主派の活動家らが逮捕されるというニュースも飛び込んできた。

香港で「国家安全維持法(国安法)」が施行されてから半年余りが経った。民主派にとって文字通り「寒い冬」を迎えた格好となっている。

活動家や前議員53人らが一斉逮捕

民主派活動家として広く知られる周氏らに対する実刑判決が出たことで、「香港の自由」を訴えたい人々にとっては、過去最悪の失望感に打ちひしがれた年末となったことだろう。

新年を迎えて間もない1月6日、治安当局は香港特区政府を「転覆しようとした」容疑として、民主活動家や前立法議会議員など計53人が相次ぎ逮捕された。国安法の施行後、最大規模の取り締まりとなった。

当局は何を指して「転覆」と言っているのだろうか。民主派は昨年9月に実施予定だった立法会選挙で、「候補者共倒れ」を防ぐため、自主的に「予備選」を実施した。当局はこの行動を「無許可で行われた国家転覆につながる行為」と定義付け、それに関わった民主活動家を今回、逮捕に踏み切った格好だ。

その後当局は1人を残し、52人を保釈している。

周氏が収監された「大欖女子懲教所」とは

一方、周庭氏はこの新年を、香港・新界(ニュー・テリトリーズ)地区西部にある大欖女子懲教所と呼ばれる刑務所で迎えた。

ここは、殺人犯や麻薬取引を繰り返すなど重大犯罪で実刑を受けた女性成年受刑者が収監される場所だという。しかし、メディアや動画などを通じて知る彼女のひととなりと重大犯罪という言葉は今ひとつ結びつかない。なぜこんな場所で新年を迎えることになったのか。

周氏は昨年12月2日、禁錮10カ月の実刑判決を受けた。罪状は2019年6月に起きた警察本部を取り巻くデモを扇動したためだ。中国の国安法施行(6月30日)よりも前に起きたため、国安法の適用は免れたが、事件から1年半余り経った昨年暮れになってようやく判決が出た格好となっている。

なお周氏は、今回判決を受けた罪状とは別に、国安法違反の「外国勢力と結託し、分離独立を扇動した」罪でも訴追されている。