15歳から8年以上にわたって、民主化運動に身を投じている周氏が実刑を受けるのはこれが初めてだ。初犯で、かつ判決から1カ月以内に凶悪犯と共に収監されている状況はいかにも不自然だ。

「応援してほしい」動画公開の直後に移送

調べてみると、周氏は収監当初、中国国境に近い羅湖懲教所に送られ、そこで他の女性囚らと相部屋で過ごしていたことが分かっている。周氏とともに政治団体「香港衆志(デモシスト)」の元メンバーで区議員も務める袁嘉蔚(ティファニー・ユン、27)氏は、収監中の周氏と面会。生活用品や彼女が読みたがっている書籍などを届けていた様子が動画で公開されている。

日本語の字幕もつけられているこの動画には周氏本人の姿は映っていないものの、彼女から袁氏が聞き取った収監中の様子が垣間見えるほか、日本の支援者に対して「応援の手紙を送ってほしい」と訴えている。

周氏が大欖女子懲教所に移送されたのは、この直後だ。親民主派のりんご日報が伝えたところによると、「動画公開から2日目に大欖への移送の知らせが伝わってきた」という。同紙記者が香港の矯正機関である懲教署に問い合わせたところ「個別の案件については回答できない」とコメントを拒否。「犯罪の程度や治安に与えるリスクなどの度合いで収監期間は異なる」とごく一般的な回答しか得られなかったとしている。

取調べ室
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看守から殴られることも

ではこの刑務所での日々の様子はどんなものなのだろうか。手を尽くして探したところ、麻薬の常習犯として大欖女子懲教所に長年収容された女性のインタビューが見つかった。

非営利メディアの香港フリープレス(HKFP)によると、6時15分に起床し、独房内で受刑者と一斉に合唱。その後、作業場に行って看守らが着る服装の縫製や、病院向けリネン類の針仕事などに当たる。あるいは、公立図書館に納める資料を綴じる作業などをこなす。

この女性によると、「受刑者同士の喧嘩が絶えなかった」上、看守から殴られることも多かったと当時の様子を語っている。ただ、独房にずっと閉じ込められているわけでもなさそうだ。

香港は日本より南にあり、暖かい場所と思われがちだが、冬は意外と寒い。雪は降らないものの四季がある。寒波が厳しい年には、ホームレスの間で凍死者が出たこともある。

それに加えて、大欖女子懲教所は背後に山を控え、海風が吹きつけるという厳しい環境にある。おそらく独房内はかなり寒いことだろう。