なお、香港での「全受刑者に対する女性が占める割合」は、他の国・地域に比べ、著しく高いという統計もある。一般的に受刑者の男女比は、女性が数パーセントにとどまる(日本は8%)が、香港では20%にも達し、世界でトップの水準とされる。

民主派活動家は“A級犯”扱いか

禁錮刑を言い渡された周氏がこうした刑務作業を行うかは不明だが、「国安法違反」で有罪判決を受けた人間が今後、大欖女子懲教所のような「カテゴリーA」レベルの受刑者が集まる刑務所に収監される可能性はある。2014年に起きた民主化運動「オキュパイ・セントラル(占領中環)」に関与したとして8カ月間の禁錮刑を受けた邵家臻(シウ・カーチュン)前立法会議員はこの状況を「極めて異例」といぶかる。

刑務所の独房
写真=iStock.com/MikeVanSchoonderwalt
※写真はイメージです

ちなみに「カテゴリーA」と認定された受刑者は、2019年は128人が入所。うち、86%は麻薬関係の犯罪、残りの14%は殺人や強姦といった凶悪犯だという。また同年末時点で、収監中のカテゴリーAの受刑者は552人いる(自由アジア放送(RFA)の発表)。

周氏と同じ罪状で12月2日に判決が言い渡された民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン、24)氏も現在、カテゴリーAレベルの刑務所に収監されているという。

民主派運動の活動家に対するこうした厳しい対応は当然のことながら、諸外国の不興を買っている。周氏らに対する判決後の声明で、国際人権団体アムネスティー・インターナショナルは判決を批判し、「政府を公然と批判する者に、次はお前かもしれないと警告」したに等しいと述べた。

また、米ポンペオ国務長官は「政治的迫害」と批判。その上で「反対意見を沈黙させるために法廷を利用するのは、権威主義体制の特質だ」と指弾している。

気に入らない勢力を片っ端から捕まえている

民主派運動の急先鋒だったメンバーが収監されたことで、香港では例年数十万人が参加する正月恒例の民主派デモがほぼ皆無となった。これについて林鄭月娥行政長官は元日、フェイスブックの動画を通じて「国安法の施行で、香港は平穏になった。以前のような暴力沙汰がなくなった」と満足感を示した。そして、その数日後に50人を超える民主派前議員らの一斉逮捕に踏み切った。

事態はもはや、「国安法」を盾に次々と気に入らない勢力を片っ端から捕まえるというレベルにエスカレートしている。9日には、米国、英国、カナダそしてオーストラリアの4カ国外相が53人の一斉逮捕に対して「深刻な懸念」を表明する共同声明を出した。しかし、実効性があるとは思えない現状が嘆かわしい。

香港は今年、どんなつらい未来が待っているのだろうか?

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