新型コロナウイルスの感染拡大で病床の逼迫が叫ばれている。だが、病院経営コンサルタントの渡辺さちこ氏と国際医療経済学者のアキよしかわ氏は、「コロナ禍以降、一般病棟とICUの稼働率はむしろ下がっている。さまざまなデータは『需要と供給のミスマッチ』を示している」という——。
※本稿は、渡辺さちこ、アキよしかわ『医療崩壊の真実』(MdN)の一部を再編集したものです。
コロナ第1波の昨年春、病床の状況はどうなっていたか
新型コロナウイルスの感染拡大よりも以前から抱えていた、日本特有の医療崩壊の危機──。その背景と経緯をデータで探り、顕在化してきたのは、日本の医療の偏った現実でした。
・先進国の中で圧倒的に急性期病床数が多い「急性期病床大国ニッポン」
・非常に長い入院期間
・その状況でも76%と低いベッドの稼働率
・治療や検査がないのに病院のベッドで食事をとるだけの「素泊まり入院」
・海外諸国と比較して「日帰り」が可能な医療が入院で行われている状況
・非常に長い入院期間
・その状況でも76%と低いベッドの稼働率
・治療や検査がないのに病院のベッドで食事をとるだけの「素泊まり入院」
・海外諸国と比較して「日帰り」が可能な医療が入院で行われている状況
こうした日本医療の不均衡が、結果として医療の質を下げ、医療費を上げているなら、「医療の価値(質/コスト)」を著しく下げてしまっている状況といえます。
これはベッドが足りないなどという話よりももっと深刻で、コロナ危機が落ち着いてからもずっと存在し続ける、根深い「医療崩壊の危機」があることを浮かび上がらせたのです。
なぜ世界の中でも医療レベルが高いという評価を受ける日本で、このようなボタンのかけ違いのような「需要と供給のミスマッチ」が起きているのでしょうか。その原因を探っていくためには、データを用いてこの問題を深く掘り下げ、新型コロナウイルスを受け入れた医療体制にもう一度目を向けていくことが必要です。それにより問題の本質に近づけるかもしれません。
緊急事態宣言という異常事態で医療機関が混乱に陥る中、重症や中等症の患者に対して、適切な治療体制が提供できていたか。あるいは、軽症の患者に対しては、その症状に合った対応だったか──。
コロナ第1波の2020年4月から5月に起きていた実態とは。ここでも客観的なデータを深掘りすることで、日本の医療提供体制の脆弱な部分が浮き彫りになってきました。
まず、新型コロナの脅威が本格的に押し寄せてきた4月、医療機関がどのようなダメージを受けていたのかを分析していきましょう。実際に「病床が足りなくなる」という医療崩壊に繋がるような兆しが現れていたか否かが見えてくるはずです。